崔曙海

崔曙海の生涯と作品

崔曙海（さい しょかい、本名：崔鶴松）は、1901年1月21日に咸鏡北道の城津で生まれました。彼の人生は、家庭の事情や社会の厳しさに影響を受け続けました。幼少期、父親が漢方医であったため、彼は早い段階から漢文を学びましたが、1910年に父は満州に行ってしまい、崔は母と共に厳しい生活を送りました。予想外の中退を余儀なくされながらも、心の中には作家としての夢がありました。

彼の人生における大きな転機は、1917年に母と共に間島へ移住したことです。この移住は、より良い生活を求める試みでしたが、結果的には日雇い労働に従事せざるを得なくなるなど、思うようにはいきませんでした。この苦しい生活体験は、後に彼の作品『脱出記』に反映されます。

1920年には結婚しますが、関係はすぐに終わり、その後も結婚と離婚を繰り返しました。結婚生活の中で生まれた娘・白琴との生活も厳しく、崔は家族を養うために必死に働き続けました。しかし、疲労からくる胃病に悩まされ、その治療として常用した阿片により、さらに不幸な事態に陥っていきます。

1923年に朝鮮へ帰国した後、北鮮日日新聞に詩を投稿し、筆名「曙海」を名乗るようになりました。これが崔にとって文壇でのスタートを切る契機となります。彼は奉先寺で生活しながら、『脱出記』や『朴乭の死』、『飢餓と殺戮』などの作品を次々と発表し、新傾向派として注目を集めました。しかし、彼の文学は政治的な意図よりも、彼自身の生理的、感情的な体験を基にしていることが、感動を呼んだのだと言えるでしょう。

1925年には、奉先寺を離れ、友人である李光洙の手助けを受け、新しい住居で新たな生活を始めました。結婚や文壇での活動を通じて、彼は多くの文士たちと交流を持ちましたが、朝鮮文壇社が経営難に陥ると、再び厳しい経済状況に戻ってしまいます。

1929年には中外日報の記者として働きますが、報酬は出ず、2年間も無給で働くこととなりました。1931年には毎日申報の学芸部長に就任するものの、体調の悪化と経済的苦境は続き、執筆活動がままならない状況が続いていました。

最終的に、崔は1932年6月末に入院し、手術を受けましたが、その後の合併症により悪化し、7月9日に死去します。彼の遺骸は弥阿里墓地に埋葬され、後に文人たちによる石碑が建立されましたが、後にその墓地は撤去され、再度改葬されることになります。

彼の作品は今でも多くの読者に愛されており、翻訳も行われています。彼の苦悩や貧困を描いた作品は、当時の朝鮮の現実を映し出すものであり、生きた証と言えるでしょう。彼が遺した文献は、文学だけでなく、当時の社会状況についても考えさせられる貴重な資料となっています。

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