崔賢級駆逐艦

崔賢級駆逐艦（チェ・ヒョンきゅうくちくかん）

北朝鮮海軍が近年開発・建造を進めている新型のミサイル駆逐艦級です。その名称は、抗日独立運動において傑出した功績を残した英雄、崔賢（チェ・ヒョン）氏に由来しており、国家の栄誉を象徴する艦艇としての位置づけがうかがえます。

開発と特徴

本級に関する具体的な情報は、2024年末に朝鮮民主主義人民共和国の最高指導者である金正恩総書記が造船所を視察した際の画像が公開されたことによって明らかになり始めました。公開された写真からは、現代海軍の主要な戦闘システムであるフェーズドアレイレーダーや、多様なミサイルを格納・発射可能な垂直発射システム（VLS）を搭載する可能性を示唆する特徴が見て取れます。これにより、本級が従来の北朝鮮海軍艦艇とは一線を画す、高度な能力を持つことが期待されています。

建造は主に朝鮮半島西海岸の南浦（ナムポ）造船所で行われている様子が衛星画像などから確認されています。その規模に関して、アメリカの戦略国際問題研究所（CSIS）は全長約140メートルと分析しており、これは現在北朝鮮で建造されている軍艦の中では最大級にあたると考えられています。また、その設計や建造には、ロシアからの技術的な支援があったのではないかという見方も専門家の間では指摘されています。一方で、その排水量や任務から、厳密には駆逐艦よりもやや小型のミサイルフリゲート（FFG）に分類されるべきではないか、との専門的な議論も存在します。韓国軍も、垂直発射システムを備えた約4,000トン級のフリゲート型艦艇の建造が始まったとの評価を示しており、南浦で進められている艦は、約120メートル級の大型浮きドックに係留された状態で最終的な艤装作業が進められている状況が伝えられています。

一番艦「崔賢」の就役と試験

本級の__一番艦には、級名と同じく「崔賢」の名が冠されました__。この艦は、朝鮮人民軍の前身である朝鮮人民革命軍の創設93周年という、国家にとって重要な記念日である2025年4月25日、南浦の造船所において、金正恩総書記も立ち会う中で盛大に進水式を迎えました。進水式で金正恩総書記は、本艦が「超音速戦略巡航ミサイル」や「戦術弾道ミサイル」といった、高い攻撃力を持つミサイルを搭載していると発言したと報じられています。

進水からわずか数日後の4月28日および29日には、海上において集中的な兵装システム試験が行われました。この試験では、超音速巡航ミサイル、新型のピョルチ艦対空ミサイル、ファサル戦略巡航ミサイル、そして主砲システムなど、多岐にわたる兵器の性能確認が試みられたと伝えられています。しかしながら、北朝鮮情勢を分析するウェブサイト「38ノース」は、これらの試験中の艦が自力航行ではなくタグボートによって牽引されていた可能性を指摘しており、本艦の推進システムがこの時点ではまだ完全に機能していなかった可能性を示唆するものとして注目されています。

二番艦の進水事故

一方、__二番艦と目される艦艇は、東海岸の清津（チョンジン）造船所にて2025年5月21日に進水が試みられましたが、この試みは失敗に終わるという予期せぬ事態が発生しました__。衛星画像からは、進水時に船体の一部が岸壁に引っ掛かった状態となり、海側に傾いたまま動けなくなっている様子が確認されました。この進水失敗を外部から隠蔽するためか、事故を起こした船体には青いシートが覆いかぶせられていたことも捉えられています。

事故発生当初、損傷は船底に大きな穴が開くほど深刻であるとの報道も流れましたが、その後の調査によって、実際の損傷は艦尾の通路の一部に浸水が生じた程度であったと修正されて伝えられています。この損傷の修復には約10日間が必要と見積もられているという情報がある一方で、浸水によって艦内の複雑な電子機器などが深刻な影響を受けている可能性も指摘されており、完全に復旧させることは極めて困難であるとの悲観的な見方もあります。実際に、アメリカの戦略国際問題研究所（CSIS）は、この二番艦が最終的に廃艦となる可能性さえ示唆しています。

この重大な事故に対し、金正恩総書記は強い不快感と怒りをあらわにしました。「到底許されない深刻な重大事故であり、これは犯罪的行為に等しい」と関係者を厳しく叱責し、事故の原因究明と責任追及を徹底的に行うよう指示しました。これを受け、朝鮮労働党中央軍事委員会は事故に関与した者への厳正な処分を命じ、国の司法機関は事故の責任者に対する拘束手続きに着手するなど、異例ともいえる徹底した追及体制が敷かれています。

まとめ

崔賢級駆逐艦の建造は、北朝鮮海軍の近代化を目指す強い意志を示すものですが、一番艦の試験における推進システムの問題の指摘や、二番艦での進水事故といった事態は、新たな大型艦艇の開発・建造において技術的な課題や安全管理上の問題が露呈している現実も同時に示唆しています。特に二番艦の事故は、その後の対応を含め、北朝鮮国内で極めて重大な事案として扱われており、今後の開発計画にも影響を与える可能性があります。本質的な影響を与える可能性があります。本級の今後の動向は、朝鮮半島の安全保障情勢において引き続き注視される重要な要素となっています。

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