崔鉄洙

崔 鉄洙（チェ・チョルス）

崔 鉄洙（チェ・チョルス、1969年12月1日生まれ）は、朝鮮民主主義人民共和国出身の卓越したアマチュア・プロボクサーでした。特にアマチュア時代には、国際舞台で輝かしい実績を残しています。

アマチュア時代の栄光

彼のキャリアの中で最も特筆すべきは、1992年にスペインで開催されたバルセロナオリンピックでの活躍です。フライ級代表として出場した崔鉄洙は、世界の強豪が集うこの大会で、圧倒的なパフォーマンスを披露。厳しいトーナメントを勝ち進み、見事に金メダルを獲得しました。この快挙により、彼は世界的にその名を轟かせ、北朝鮮ボクシング界の歴史に名を刻みました。

プロへの転向と日本での短い挑戦

アマチュアでの頂点を極めた後、崔鉄洙はプロボクシングの世界へと新たな一歩を踏み出します。1996年、日本の著名なプロレスラーであるアントニオ猪木氏の仲介により、他の北朝鮮出身ボクサー2名と共に日本の協栄ボクシングジムに招かれ、来日を果たしました。この異例の経緯での来日は、当時大きな話題となりました。

日本のリングでのプロデビュー戦は、1996年4月15日に後楽園ホールで行われた「ガッツファイティング」の興行内でした。メインイベントでは、当時のWBA世界ライト級王者オルズベック・ナザロフ氏の5度目の防衛戦が行われるという注目度の高い興行です。崔鉄洙は、このデビュー戦で3回終了時のTKO勝利を収め、幸先の良いスタートを切りました。しかし、日本のリングで戦ったのはこの1戦のみで、短期間のうちに帰国することとなります。

中国での再起とPABA王座獲得

日本でのキャリアが短く終わった後、崔鉄洙は活動の拠点を中国に移しました。新たな環境でプロボクサーとしての道を模索し続けます。そして、1998年8月15日、中国の温州市で開催されたパンアジアボクシング協会（PABA）フェザー級暫定王座決定戦に出場します。このタイトルマッチで、彼はアーク・ダンジャデー選手と対戦。3回KO勝ちという鮮やかな勝利を収め、PABAフェザー級暫定王者となりました。中国を拠点に、アジア地域でのタイトルを獲得したのです。

王座防衛とその後

PABA暫定王者となった崔鉄洙は、翌1999年8月22日に中国の瀋陽市で初防衛戦を行います。対戦相手はサミュエル・デュラン選手でした。この試合でも、崔鉄洙は強さを見せつけ、2回KO勝ちを収め、初防衛に成功しました。

暫定王者として、正規王者であったチャモアペット・ハーパラン選手との王座統一戦の実現が期待されましたが、残念ながらこの統一戦は実現しませんでした。そして、初防衛成功と同月内に、崔鉄洙は保持していたPABAフェザー級暫定王座を返上しました。

アマチュア時代にはオリンピック金メダルという輝かしい功績を残し、プロ転向後も日本でのデビュー戦勝利、そして中国を拠点にPABA暫定王座を獲得・防衛するなど、短いプロキャリアながらも印象的な足跡を残したボクサーでした。

もう一度検索