ガッツファイティング

「ガッツファイティング」は、TBS系列のテレビ局が放送するプロボクシングの試合中継番組の名称であるとともに、関連するプロボクシング興行の名称でもあります。かつては協栄ボクシングジム、後にワタナベボクシングジムが主催していましたが、現在は主に志成ボクシングジムが主催する興行に冠されています。本項目では、「ガッツファイティング」の枠組みを中心に、TBS系列におけるプロボクシング中継全般の歴史と形態について解説します。なお、元プロボクサーのガッツ石松氏とは直接的な関連はありません。

歴史

この番組のルーツは、かつて日本テレビとの関係が深かった協栄ボクシングジムが、具志堅用高選手の世界王座挑戦を計画した際にさかのぼります。当時の具志堅選手の世界戦放映権は東京12チャンネル（現在のテレビ東京）にありましたが、同局が独立放送局であったため、具志堅選手の地元である沖縄を含む全国での視聴が難しい状況でした。そこで協栄ジムは、全国的なネットワークを持つ他局での放送を希望しました。当時、沖縄にはTBS系列の琉球放送とフジテレビ系列の沖縄テレビ放送がありましたが、フジテレビは「黒い霧事件」の影響で協栄ジムと対立関係にあった三迫プロモーションと提携していたため、TBS系列での放送が現実的な選択肢となりました。

一方、TBS側は、極東ボクシングクラブとの提携で放送していた「東洋チャンピオンスカウト」が終了しており、新たなボクシング中継コンテンツを求めていました。このような背景の中、協栄ジムが売り出し中だった具志堅選手の才能をTBSが高く評価し、彼の世界初挑戦試合を中継することが決定。これが、後の「ガッツファイティング」につながる重要な一歩となりました。この中継は、デイリースポーツの協賛も得て実施されました。

1978年、第1回「ガッツファイティング」興行が開催され、以来、TBSと協栄ジムは密接な関係を築きました。長年にわたり、協栄ジム主催の興行が深夜枠を中心に「ガッツファイティング」として中継されました。この枠では、関東圏の協栄ジム所属選手の試合に加え、系列局が制作する畑中清詞選手のような世界タイトルマッチ、さらには1998年のマニー・パッキャオ選手の来日試合なども放送されるなど、多様なコンテンツを扱いました。

1999年、協栄ジム初代会長である金平正紀氏の死去に伴い、番組としての放送は一時休止となりましたが、興行自体や世界戦の中継は継続されました。その後、亀田興毅選手のプロ4戦目から「深夜ボクシング」として不定期に復活。亀田選手が協栄ジムに移籍した2005年には「MIDNIGHT BOXING」と改称されました。さらに時を経て、「ガッツファイティング」の番組タイトルが再び使用されるようになり、不定期での中継が行われました。

2012年10月からは、大橋ボクシングジム主催の「フェニックスバトル」もこの深夜枠で放送されるようになり、井上尚弥選手のデビュー2戦などが中継されました。また、女子世界戦や、56年ぶりに復活した日本ヘビー級王座決定戦なども同枠で中継され、中継対象が広がりました。一方、協栄ジム主催の「ガッツファイティング」興行も続けられましたが、中継されないケースや遅れて録画放送されるケースもありました。2012年以降は中日新聞東京本社が後援に加わっています。

2018年3月の興行からはワタナベボクシングジムが主催に変わり、2019年2月からは注目度の高い試合がParaviで生配信されるなど、媒体の活用も多様化しました。そして、2020年に志成ボクシングジム（旧Ambition）が設立されて以降は、同ジムが主な主催者となっています。

近年の放送形態とプラットフォームの変遷

「ガッツファイティング」の番組名で放送されるのは、主に志成ジム（かつて協栄、ワタナベ）主催の興行から選ばれた1～3試合（日本・東洋太平洋タイトル戦などが中心）を中継する深夜枠が基本です。一方、世界タイトルマッチなど注目度の高い試合は、原則としてゴールデンタイムや土日祝日の昼間に「TBSボクシング」といった別タイトルで生中継されることが多く、JNN系列の全国ネットで放送される場合や、対戦カードに応じてネット局が異なる場合があります。これらの大型中継では1時間程度の放送枠が設けられ、必要に応じて放送時間の延長オプションも設定されることがあります。世界戦のアンダーカードの一部が、後日深夜の「ガッツファイティング」枠で録画中継される連携もありました。

過去には、2008年から2010年頃にかけて、世界戦がFEG主催の格闘技イベントと合わせて「格闘技2大祭り」として中継される傾向が見られました。また、2011年以降は隔週土曜深夜のスポーツ番組枠「S☆1 plus」内で放送されることもあり、年末には「KYOKUGEN」などのスポーツ特番や「SASUKE」に内包される形で世界戦が放送された時期もありました。

2018年末以降、世界戦をメインとする興行は、「LIFETIME BOXING FIGHTS」という名称（番組タイトルとして前面に出ないケースも含む）で放送されるようになりました。中継制作に関しては、TBSの放送対象地域である関東広域圏外で行われる試合の場合、大阪なら毎日放送（MBS）、名古屋なら中部日本放送（CBC）など、系列局の制作協力のもと、TBSが主体となって制作することが一般的です。解説・実況はTBSのアナウンサーやスタッフが担当しますが、コーナーリポーターとして系列局のアナウンサーが派遣されることもあります。

CS放送のTBSチャンネル2では、地上波で中継された世界戦などの録画放送に加え、過去の名勝負のアーカイブ放送も行われています。かつては、日本タイトルや東洋太平洋タイトルなど、地上波ゴールデンタイムで中継されない一部の世界戦を含む注目試合が生中継されることもありました。地上波版「ガッツファイティング」は原則関東ローカルですが、後日TBSチャンネル2で全国放送されるケースが多いです。また、BS-TBSでは、プロ野球中継が中止になった際の代替番組として、過去の試合のアーカイブが編成されることもありました。

2019年以降は、動画配信サービスであるParaviでの展開が積極的に行われ、「ガッツファイティング」や「LIFETIME BOXING FIGHTS」の注目試合（地上波生中継される世界戦を含む）の生配信、見逃し配信、アーカイブ配信が行われました。ただし、他局のボクシング中継で活用されるTVerでの配信は行われていませんでしたが、2022年7月からは「LIFETIME BOXING FIGHTS」の一部試合がTVerでもライブ配信されるようになりました。Paraviで配信されないアンダーカードの一部は、志成ボクシングジムの公式ファンクラブサイトでライブ配信されるなど、多角的な配信が行われていました。

さらに、2021年12月に行われたOPBF東洋太平洋タイトル戦は、後日BOXING RAISEという配信サービスで録画配信され、TBS地上波でも深夜に録画中継されるなど、新たな配信プラットフォームの活用も見られました。2022年8月以降、「LIFETIME BOXING FIGHTS」の一部興行はABEMAでも生中継されており、特に世界戦をメインとしない興行を中心にABEMAでの配信が進んでいます。ABEMAで配信された試合は、TBS地上波やTBSチャンネル2では放送されず、代わりにYouTubeの「LIFETIME BOXING CHANNEL」で配信される形態となっています。

世界戦の地上波全国生中継は、2022年12月31日の井岡一翔選手の世界王座統一戦が、現時点では最後の例となっています。それまでTBSとParaviで生中継されていましたが、2023年6月の再戦はABEMA PPVでの独占生中継となり、地上波ではABEMAを共同運営するテレビ朝日系のスポーツドキュメンタリー番組で取り上げられる形となりました。また、例年実施されていた大晦日のボクシング中継も、2023年は行われませんでした。ParaviがU-NEXTに統合された後は、国内ボクシング中継のラインナップが日テレジータスから移行した「DYNAMIC GLOVE」にほぼ集約されたこともあり、2023年以降、TBS本体が企画・制作に関わるボクシング中継（地上波、衛星放送、ネット配信含む）は休止状態にあります。ただし、TBSチャンネル2での過去のアーカイブ放送は継続されています。

過去に放送していたジム

番組の歴史の中で、多くのボクシングジム主催の興行や、所属選手の試合が中継されてきました。代表的なものとしては、番組開始当初からの協栄ボクシングジムをはじめ、角海老宝石ボクシングジム（土屋修平、藤本京太郎、小國以載など）、FLARE山上ボクシングジム（和氣慎吾など）、白井・具志堅スポーツジム（名護明彦など）、横浜光ボクシングジム（畑山隆則など）、宮田ジム・スポーツクラブ（内藤大助、粉川拓也など）、大橋ボクシングジム（八重樫東、井上尚弥、宮尾綾香、松本亮など）、亀田ジム（亀田興毅、大毅、和毅など、MBS制作協力の「亀田祭り」など）、古口ボクシングジム（和氣慎吾など）、井岡ボクシングジム（井岡一翔、石田匠、山本隆寛など、MBS制作協力）、金子ボクシングジム（清水智信、大竹秀典など）、ウォズボクシングジム（大森将平など）、ワタナベボクシングジムなどが挙げられます。現在、これらのジムの興行が他のテレビ局やプラットフォームで放送されているケースも多くあります。

主な出演者（解説・実況・MCなど）

TBS系列のボクシング中継では、多くの専門家やアナウンサーが出演してきました。

解説者: 内藤大助氏（元WBC世界フライ級王者）、内山高志氏（元WBA世界スーパーフェザー級王者）らが務めています。過去には、白井義男氏、具志堅用高氏、竹原慎二氏、畑山隆則氏、鬼塚勝也氏、佐藤修氏、飯田覚士氏、長谷川穂積氏といった歴代の世界王者や、ゲスト解説として俳優の香川照之氏なども出演しました。
実況・リポーター: TBSのアナウンサー陣が中心で、伊藤隆佑、土井敏之、新タ悦男、赤荻歩、杉山真也、石井大裕、熊崎風斗、小林廣輝、高柳光希といった面々が担当してきました。系列局であるMBSの井上雅雄アナウンサーがリポーターとして参加したこともあります。
MC: ゴールデンタイムなど大型中継の進行役として、杉山真也アナウンサー、山形純菜アナウンサーらが務めています。過去には、小島瑠璃子氏、藤森祥平アナウンサー、田中みな実アナウンサー（当時）、赤井英和氏、千原ジュニア氏、魔裟斗氏、江藤愛アナウンサーなど、様々な顔ぶれが登場しました。MCは通常、リングサイドに設けられた特設セットから進行します。

テーマ曲

番組を彩るテーマ曲も時代とともに変化してきました。主なものとして、ガンマ・レイの「HEADING FOR TOMORROW」、ロビー・ヴァレンタインの「I NEED YOUR LOVE」、Public Enemyの「Hard Rhymin'」、高橋優の「絶頂は今」、HaKUの「everything but the love」、そしてsyudouの「たりねぇ」などが使用されてきました。

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