嵯峨実勝

嵯峨実勝は、明治時代から昭和時代中期にかけて活躍した日本の華族であり、嵯峨家30代当主として侯爵の地位を授けられました。父は嵯峨公勝、母は南加。妻は9代浜口吉右衛門の長女・尚子です。

実勝の人生は、娘である浩が愛新覚羅溥傑と結婚したことで大きく変化します。この結婚は、軍部主導による日満親善のための政略結婚であり、嵯峨家には一切相談がありませんでした。浩は満州国皇帝の弟である溥傑の妃となり、中国へ渡ることになります。夫婦仲は良好でしたが、浩は軍部と宮廷の厳しい政治情勢に晒されることになります。実勝は、苦境に立つ娘を「浩さん、何事も我慢するんだよ」と励ましたといいます。

第二次世界大戦中、実勝は妻子を疎開させ、自身は東京を離れませんでした。赤坂にあった自宅は空襲で焼失し、戦後は横浜市日吉に住居を移しました。食糧難の中、庭を耕して野菜を栽培したり、鶏を飼育したりして生活を支えました。華族制度が廃止されると、代々伝わる書画や骨董を売却して生活費に充てざるを得ませんでした。

終戦後、浩は夫と生き別れ、大陸を流転した後、日本へ帰国しました。嵯峨家は一家で浩と二人の娘（慧生と嫮生）の生活を支えました。実勝夫妻は、満員電車で学習院に通学する孫たちを交代で送り迎えをしたといいます。

実勝の妹である幾久子は、町田学園（現在の品川エトワール女子高等学校）の創始者である町田徳之助に嫁ぎました。この縁から、実勝は1949年6月15日に町田学園エトワール幼稚園を開園し、初代園長を務めました。

実勝は、愛新覚羅溥儀と同じ1966年に78歳で亡くなりました。激動の時代の中、華族としての責務を全うし、家族を愛し続けた人物でした。

実勝の子供には、以下の人物がいます。

長女：嵯峨浩（愛新覚羅溥傑夫人）
次女：池見啓子（池見猛の妻）
三女：福永泰子
四女：町田幹子
* 長男：嵯峨公元

実勝の生涯は、華族制度の終焉と、それに伴う生活の変化、そして家族の絆を描いたものでした。娘の浩を通じて、歴史の大きなうねりに巻き込まれながらも、家族を大切にし、困難に立ち向かった姿は、多くの人々に感動を与えています。

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