川上貞奴

川上貞奴の生涯

川上貞奴（かわかみ さだやっこ、戸籍名：川上 貞、旧姓：小山）は、1871年7月18日に東京・日本橋で生まれました。彼女は伝統ある両替商の12番目の子供として誕生したものの、生家の没落により、7歳の時に芸妓置屋の女将・可免吉の養女となり、そこから「貞奴」という名を持つことになります。美貌と才能を兼ね備えた貞奴は、その後日本一の芸妓として名を馳せ、多くの著名人から支持を受けました。

貞奴はその確かな日舞の技術で知られ、時には名士に贔屓にされることもありました。しかし、その裏には厳しい批評も多く、特に西園寺公望からの厳しい言葉が印象的です。公望は貞奴の美貌を讽刺し、「とても贔屓には思えない」と述べています。

結婚とアメリカ巡業

1894年、貞奴は自由民権運動の活動家・川上音二郎と結婚しました。生活は順風満帆ではなく、音二郎が二度の衆議院選挙に落選したことで家計が困窮する事態が続きました。1898年には国外脱出を試みましたが、失敗に終わり、淡路島に漂着することになります。困難を経て、1899年には音二郎一座のアメリカ巡演に参加し、日舞を披露しました。

この巡業中、サンフランシスコでの公演資金を興行師に持ち逃げされるという事件が発生。一座は無一文の状態になりましたが、在留邦人の助けを受けてこの危機を乗り越えました。シアトル公演では、『芸者と武士』を発表し、彼女の美貌と演技が評判を呼び、一躍人気女優となります。

ヨーロッパへの旅

1900年、音二郎一座はロンドンでの公演後、パリ万国博覧会に招待されます。この公演は非常に成功し、貞奴は彫刻家ロダンからの注目を集めますが、彼女は多忙を理由にその申し出を断りました。フランスでの活動中、彼女の舞台は多くの人々に愛され、ドビュッシーやピカソなどの著名人からも称賛されました。

1908年には、後進の女優育成を目的に帝国女優養成所を設立し、後に帝国劇場付属技芸学校へと受け継がれます。

私生活の波乱

福澤諭吉の娘婿で「電力王」と称された福澤桃介との関係も注目されました。彼らの出会いは1885年にさかのぼり、野犬に襲われた貞奴を桃介が助けたことから始まりました。結婚後、音二郎が亡くなった後も、彼女は引退せずに公演活動を続けました。

彼女と桃介が共に過ごす中で、二葉御殿と呼ばれるサロンが名古屋に設けられ、多くの著名人が集まる場となりました。このサロンは今でも「文化のみち二葉館」として存在しています。

最後の時

1946年、川上貞奴は膵臓癌により75歳で亡くなりました。彼女の生涯は波乱に富んでおり、数々の伝説や逸話が今に残っています。その影響は、名古屋にある別荘、萬松園や貞照寺に見られ、彼女の多彩な人生を物語っています。

貞奴の人生は、芸術だけではなく、彼女自身の生き様としても興味深く、多くの人々に影響を与え続けています。

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