川井忠遠

川井忠遠（かわい ただとお）

川井忠遠は、戦国時代末期から江戸時代初期にかけて活躍した武将であり、佐竹氏の家臣でした。佐竹氏の領地の中でも、陸奥国南部の最前線に位置する赤館城の城代を務めていました。

出羽国への移封と先遣隊

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いの後、佐竹氏は常陸国から出羽国へ移封されることになります。慶長7年（1602年）、忠遠は和田昭為とともに先遣隊として出羽へ派遣され、秋田実季から湊城を受け取りました。

川井事件

佐竹義宣が久保田藩に入ると、家中の改革が始まりました。義宣は、渋江政光や梅津憲忠・政景兄弟など、才能ある浪人あがりの若手を重用したため、譜代の重臣たちは不満を募らせていました。

慶長8年（1603年）、家老の小貫頼久が亡くなると、忠遠がその後任として家老に任命されました。しかし同時期、もう一人の家老であった和田昭為が職を辞し隠居すると、渋江政光を家老に抜擢する人事案が浮上します。これに対し、忠遠は「浪人が家老となり、諸士の上に立つのは譜代に人がいないのと同じだ」と激怒し、小泉籐四郎、野上刑部左衛門、小野玄蕃、大窪長介らとともに政光の暗殺を企てました。この際、政光だけでなく、主君である義宣の暗殺も企てていたという説も存在します。

しかし、この計画は事前に発覚し、先手を打った義宣によって、忠遠ら武断派は各個撃破されます。忠遠は横手城で、小泉は土崎湊で、野上は角館城で、大窪は湯沢城で、それぞれ殺害されました。この事件は、後に「川井事件」と呼ばれるようになります。なお、小野玄蕃は忠遠と共に横手に滞在していましたが、佐竹義重の嘆願により命を救われ、その後は六郷で義重に仕えました。

川井事件後

忠遠の死後、義宣は政光の家老昇格を一旦見送り、武断派でも吏僚派でもない向宣政を家老に任命しました。政光が家老に就任するのは、4年後の慶長12年（1607年）のことでした。

主君への反逆を企てたとして粛清された忠遠は、川井家の系図からも削除されており、その記録はわずかしか残されていません。

参考資料

土居輝雄『佐竹史探訪』秋田魁新報社、1997年9月。ISBN 487020178X
渡部景一『「梅津政景日記」読本－秋田藩家老の日記を読む』無明舎出版、1992年5月20日。ISBN 978-4895442015

関連作品

岩明均『雪の峠・剣の舞』講談社、2001年3月21日。ISBN 978-4063343878
画：倉田よしみ; 作：土居輝雄『青山くんの夏休み―秋田市400年物語』秋田魁新報社、2004年12月1日。ISBN 978-4870202412

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