梅津憲忠

梅津憲忠：知略と武勇を兼ね備えた久保田藩の名家老

梅津憲忠（うめづ のりただ）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての武将で、出羽国久保田藩（秋田藩）の家老を務めた人物です。その生涯は、戦国時代の動乱から江戸時代の安定へと移り変わる激動の時代を背景に、政治家、武将、そして文化人としての多面的な才能を発揮しました。

生い立ちと佐竹家への仕官

梅津氏はもともと宇都宮氏に仕える家柄でしたが、父・道金が失踪したことで、憲忠は幼少期を困窮の中で過ごしました。しかし、その逆境の中で学問に励み、佐竹北家の佐竹義憲にその才能を見出されます。義憲は憲忠に食禄を与え、学問を奨励し、彼の成長を大きく支えました。憲忠は義憲を深く尊敬し、その偏諱を賜り「憲忠」と名乗ったとされています。また、同僚との争いが原因で一時出奔しますが、義憲の取り成しで帰参するなど、義憲の存在は憲忠にとって非常に大きなものでした。

異父兄である木野春阿弥が佐竹義宣に茶坊主として仕え、武勇の誉れ高く活躍したものの若くして病没すると、その後任として憲忠が抜擢されます。茶坊主・善阿弥として義宣に近侍する中で頭角を現し、その能力を認められ、やがて佐竹家の祐筆として藩の屋台骨を支える存在へと成長していきます。

久保田藩での活躍

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いで、佐竹義宣が常陸国から出羽国へ移封されると、憲忠は300石を与えられ、近習出頭人に抜擢され、弟の梅津政景や渋江政光らとともに藩政の刷新に尽力しました。久保田藩は、藩主義宣の指揮のもと、林業、鉱業、農業を基軸とした藩の振興策を進めましたが、その発展には憲忠と政景兄弟の献策が大きく貢献しました。

慶長19年（1614年）の大坂冬の陣では、子の廉忠と共に参戦し、今福の戦いで勇猛果敢に戦い、武勲を挙げました。この時、憲忠は黄唐織の幌を飾り、全身に傷を負いながらも奮戦したことから、「佐竹の黄鬼」と畏怖されたと伝えられています。翌年には徳川秀忠に拝謁し、その戦功を称えられ、信国の太刀と感状を賜りました。秀忠から褒賞を与えられたことに対して多くの人々が祝いに訪れ、憲忠は具足餅を振る舞ったとされています。この饗宴は恒例化し、梅津家では毎年1月17日に具足餅をふるまう行事が催されるようになりました。

その後、長年の実績が評価され、憲忠は家老に抜擢されます。大坂の陣で戦死した渋江政光が推進していた検地を引き継ぎ、弟の政景とともに藩の地盤固めに貢献しました。元和8年（1622年）には、主君・佐竹義宣が幕府から出羽由利郡の桃三段を引替地とすることを許可された際、義宣から引渡に関して指示を受けています。寛永元年（1624年）には、領内に禁教令が出された際、奉行としてキリシタン33人を処刑するなど、藩の要職を歴任しました。

文化人としての一面

憲忠は、優れた政治家、武将である一方で、連歌や書道にも造詣が深い教養人でもありました。主君である佐竹義宣も、鷹狩りの帰り道に憲忠の屋敷に立ち寄り、共に歌や茶の湯を楽しんだと伝えられています。

死没とその後

寛永7年（1630年）、梅津憲忠は59歳でその生涯を閉じました。その死後も、梅津家は久保田藩において重きをなし、幕末までに6人の家老を輩出しました。憲忠の長男・廉忠は父に先立ち亡くなったため、次男の忠国が跡を継ぎました。梅津宗家は、渋江宗家と並び「大梅津」と称されるほどの名家として、その名を歴史に刻みました。

子孫と屋敷

憲忠を祖とする梅津氏宗家の屋敷は、江戸時代を通じて久保田城三ノ丸下中城の東側にありました。現在の秋田市立中央図書館明徳館、国学館高等学校および旧秋田県立美術館所在地がその跡地にあたります。当時の東西方向の道路は外堀の土手の直下にあり、現在の明徳館小路は梅津氏屋敷の敷地内であったとされています。

まとめ

梅津憲忠は、戦国時代から江戸時代初期にかけての激動の時代を、政治家、武将、文化人として多岐にわたり活躍した人物です。佐竹家への忠誠心、藩政への貢献、そして教養の高さは、後世に語り継がれるべきものでしょう。

参考文献

『三百藩家臣人名事典 第一巻』
『天英公御書写』
『義宣家譜』
渡部景一『図説 久保田城下町の歴史』無明舎出版、1983年2月。
則道『秋田武鑑』無明舎出版、1983年6月。

関連項目
角間川町

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