川島大橋

岐阜県各務原市を流れる木曽川本流に位置する川島大橋は、主要地方道である岐阜県道180号松原芋島線の一部を構成する重要な橋梁です。各務原市の川島松原町と川島笠田町を結んでいます。

歴史的背景と架橋運動

この地域には江戸時代、現在の川島大橋よりも約300メートル下流に「笠田の渡し」という渡船場が存在しました。また、その上流約2キロメートルには「松倉の渡し」がありましたが、この場所には橋が架かることはありませんでした。やがて近代化が進む中で、木曽川を渡る恒久的な橋の必要性が高まり、川島大橋の建設に向けた運動が約10年間にわたり展開されます。

1953年（昭和28年）には架橋期成同盟会が結成され、熱心な活動が行われました。1956年（昭和31年）には、期成同盟会が岐阜県知事に対し陳情を行っています。この陳情書には、計画されている橋が名古屋市から一宮市、川島村（当時）を経由し、さらに郡上方面を経て北陸地方へと至る広域的なルートの一部となることが強調されました。期成同盟会には、一宮市、木曽川町、岐阜市、羽島市、美濃市、上羽栗村、八剣村、笠松町、柳津村、稲羽町、那加町、蘇原町、芥見村、八幡町といった広範な地域の市町村長が名を連ねており、この橋への期待の大きさがうかがえます。

旧橋の建設と供用

架橋実現への機運が高まる中、1959年（昭和34年）8月には木曽川南派川に河田橋が開通し、木曽川本流への架橋計画が進むための前提条件が整いました。同年には初めて川島大橋の建設費用が予算に計上され、具体的な建設段階へと移行します。建設工事は1959年（昭和34年）に開始されました。なお、建設中の便宜的な名称として「笠田橋」と呼ばれることもありました。

そして1962年（昭和37年）8月8日、川島大橋はついに開通を迎えました。竣工式には河野一郎建設大臣、松野幸泰岐阜県知事、大野伴睦衆議院議員ら多数の要人が列席し、その完成を祝いました。総工費は約1億8000万円でした。木曽川本流は川幅が広いという地形的な特性から、架設された橋は日本で初めてとなる5径間連続トラス橋という形式が採用されました。この橋の開通により、川島町の中心部と笠田町が直接結ばれ、地域の交通利便性が大きく向上しました。その影響として、同年8月31日をもって川島町立川島小学校笠田分校が廃止されています。

その後、利便性向上のため、1969年（昭和44年）2月6日には歩行者・自転車専用橋が新たに供用開始されました。旧橋の諸元は、総延長343.50メートル、車道橋の幅員は6.00メートル、歩道橋は2.25メートルでした。

異常の発覚と復旧事業

長年にわたり供用されてきた川島大橋でしたが、2021年（令和3年）5月28日、通行人から橋が傾いているとの通報が寄せられました。これを受け、同日22時をもって橋は全面通行止めとなりました。通報の約1週間前にあたる5月20日から21日にかけてこの地域では集中豪雨が発生し、木曽川が増水していました。この豪雨が橋脚の傾斜の原因となったと考えられています。調査の結果、右岸側のP4橋脚において、河床が削られる「洗掘」によって上流側に傾斜するという異常が確認されました。これ以上の被害を防ぐため、6月9日からは約1ヶ月間にわたり緊急対策工事が行われ、河道の流れを変えたり、橋脚周辺を埋め戻したりする応急措置が講じられました。

橋の早期復旧が喫緊の課題となる中、同年9月3日、国土交通省は国の権限代行による災害復旧事業として川島大橋の復旧を進めることを発表しました。当初、被害が集中したP4橋脚を含む一部区間のみを架け替える案と、橋全体を架け替える案が検討されました。しかし、詳細な調査により、被害を受けていないとみられていた区間も応力バランスが崩れていることが判明したほか、旧橋が1956年（昭和31年）の古い設計基準に基づいているために耐震性に問題があることが明らかになりました。これらの結果を踏まえ、橋全体を新たに架け替えるという方針が決定されました。

復旧事業は国の権限代行により進められることとなり、同年10月27日から国による本格的な作業が開始されました。復旧工程は、まず被災した既存橋梁の撤去、次に歩行者や自転車のための仮橋の設置、そして最終的な新しい橋梁の建設という三段階で進行しています。

旧橋の撤去作業は2021年12月1日から始まり、橋脚や上部構造物の撤去が進められました。また、同じく12月1日からは、旧橋から約300メートル下流の旧笠田渡船跡付近に、歩行者専用の仮橋の建設が開始されました。この仮橋は全長395メートル、幅員4メートルの規模を持ち、2022年（令和4年）8月26日に供用が始まりました。仮橋は歩行者と自転車のみが通行可能で、原動機付自転車やオートバイの通行は禁止されています。また、犬山市にある犬山水位観測所で木曽川の水位が11.6メートルを超えた場合は、安全のため通行止めとなる規制が設けられています。

旧橋の撤去は順調に進み、2023年（令和5年）2月には上部構造物の撤去が完了。最後に残っていた橋脚や川島松原町側の構造物も同年11月までに全て撤去されました。

新橋の建設

新しい川島大橋は、被災原因である洗掘への対策を強化し、早期の全面復旧を目指すため、既設橋と同じ位置に、鋼2径間アーチ橋という形式で建設されることが決定しました。この形式は、橋脚基礎部の工事を旧橋の撤去と同時並行で進めることが可能となるため、工期短縮に繋がると期待されています。計画では全長約360メートルとなり、鋼2径間連続アーチ構造で、アーチ部の高さは最大約20メートルとなります。新橋の建設は2022年（令和4年）12月1日に着工しました。新たな川島大橋の完成は、着工から4年から6年後、すなわち2026年から2028年頃を目指して工事が進められています。

長年にわたり地域の交通を支えてきた川島大橋は、一度は災害によりその役目を終えましたが、現在、国の主導による大規模な復旧事業によって、より安全で強靭な新しい橋として生まれ変わろうとしています。早期の全面開通が地元住民や利用者から待ち望まれています。

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