川崎市歌

川崎市歌：歴史と変遷、そして現代における新たな展開

川崎市歌は、神奈川県川崎市の市歌として、1934年（昭和9年）に市制10周年を記念して制定されました。作詞は小林俊三、作曲は「時計台の鐘」で知られる高階哲夫が手掛けました。

市歌制定の背景と認知度の低迷

制定当初、歌詞は一般公募で選ばれましたが、市民への普及は県庁所在地の横浜市歌と比較して低いのが現状です。2004年のアンケート調査では、市民の認知度はわずか14%でした。その要因として、歌詞が文語体で難解であること、市民愛唱歌「好きです かわさき 愛の街」が日常的に耳にする機会が多いことなどが挙げられます。

音楽のまち・かわさき推進協議会の取り組みと市の姿勢

「音楽のまち・かわさき」推進協議会は、2010年に川崎を主題とする楽曲を集めたCDを発売し、川崎市歌も収録されました。しかし、市は長らく市歌のPRに積極的な姿勢を示していませんでした。2012年に刊行された書籍では、川崎市歌が紹介されず、愛唱歌のみが取り上げられるなど、その存在は軽視されていました。

川崎市立商業高校の生徒による発車メロディ採用への働きかけ

2015年、川崎市立商業高校の生徒が、他県の鉄道駅で市歌が発車メロディとして採用されている事例を知り、川崎市歌のオルゴール調アレンジを制作しました。そして、市内の鉄道事業者に対して発車メロディとしての採用を働きかけた結果、2016年4月5日からJR東日本・川崎駅の南武線ホームで発車メロディとして採用されることになりました。当初は1年間の限定採用でしたが、その後も継続使用されています。

市のPR戦略の転換と市制100周年に向けた取り組み

高校生たちの活動をきっかけに、市も市歌のPRに力を入れるようになりました。市有施設での演奏を推奨し、2024年の市制100周年を機に、YouTubeの市公式チャンネルで音源を公開するなど、新たな展開を見せています。

2019年には、川崎市公文書館で市歌の変遷を辿る企画展示が開催され、市民の関心を呼びました。

歌詞の改訂：時代に合わせた変化

川崎市歌は、過去に2度の歌詞改訂が行われています。1969年の最初の改訂では、公害を想起させる歌詞が削除され、川崎大師に関する記述も変更されました。2004年の2度目の改訂では、時代に合わない表現や難解な箇所が修正されました。また、2008年には、楽曲の歌い方が統一されるよう楽譜が改訂されました。

入試問題における誤り

2016年、川崎市立川崎高校附属中学校の入学試験で、川崎市歌の歌詞に関する誤った出題がありました。市は謝罪し、該当の設問については全員を正解とする措置を取りました。

参考文献

田村隆治『川崎大師を語る 附・弘法大師御自伝』（耕進社、1935年）
『川崎市のあゆみ 指定都市の指定を記念して』（川崎市役所、1973年）
中山裕一郎 監修『全国 都道府県の歌・市の歌』（東京堂出版、2012年）

関連情報

川崎市歌の外部リンク'>川崎市歌
川崎おどり
神奈川県の市町村歌一覧

川崎市歌は、市民の記憶に深く刻まれているとは言い難いものの、発車メロディへの採用や市によるPR活動の強化など、新たな展開を見せています。市制100周年を迎え、川崎市歌がどのように市民に浸透していくのか、今後の動向が注目されます。

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