川添利幸

川添利幸

川添利幸（かわぞえ としゆき）は、大正14年（1925年）6月11日に生まれ、令和4年（2022年）8月22日に97歳でその生涯を閉じた日本の法学者です。特に憲法学を専門とし、長年にわたり中央大学で教鞭を執り、同大学の名誉教授および元学長という輝かしい経歴を持ちます。新潟県にルーツを持つ川添氏は、法学の研究と教育、そして大学運営に生涯を捧げました。

経歴

川添氏の学問の道は、1950年に中央大学法学部を卒業したことから始まりました。卒業後、彼は母校である中央大学に残り、法学部助手として研究者としてのキャリアをスタートさせます。その後、精力的な研究活動が評価され、1954年には専任講師に昇任し、同年中に助教授となります。そして1962年には法学部教授へと昇格し、中心的な教員の一人となります。さらに1964年からは大学院法学研究科の教授も兼任し、高度な専門研究と大学院生の指導にも携わりました。

大学における教育・研究活動と並行して、大学運営にも深く関与するようになります。1969年には中央大学評議員に選任され、大学の方針決定に関わる重要な役割を担います。1973年には法学部長および大学院法学研究科委員長という学部・研究科のトップを務めると同時に、中央大学の理事にも就任します。その後も、1977年から1979年まで再び法学部長を務め、1981年から1983年までは大学院法学研究科委員長を再任するなど、要職を歴任しました。

彼のキャリアの頂点は、1984年に中央大学の学長および理事に就任したことです。1990年までの6年間、大学の舵取り役としてその手腕を発揮し、この期間中には1986年から1990年まで総長代行も務めました。学外でも活躍し、1975年から1983年にかけて旧司法試験第二次試験の考査委員を務め、法曹界の育成に貢献しました。また、1985年から1991年まで日本私立大学連盟の常務理事を務めるなど、私立大学全体の発展にも尽力しました。

研究活動においては、1966年にはドイツのエバーハルト・カール大学テュービンゲンにて在学研究を行うなど、国際的な視点も取り入れました。1996年に中央大学を定年退職した後も、同大学の名誉教授としてその功績が称えられました。

研究と教育

憲法学を専門とした川添氏は、その理論的な探求とともに、多数の著作を通じて研究成果を発表しました。また、教育者としても優れ、多くの後進を育成しました。彼の指導を受けた学生には、山下威士氏、畑尻剛氏、石川敏行氏、工藤達朗氏など、後に法曹界や学界で活躍する人材が多数います。

主な著作

川添利幸氏の主要な著書や共編著には、以下のようなものがあります。

『憲法概論』（文久書林、1962年）
『憲法重要判例集』（文久書林、1962年）
『法学概論』（文久書林、1966年）
『憲法保障の理論』（尚学社、1986年）
* 共編著として、『現代法と国家』（橋本公亘、和田英夫と共編、岩波書店、1965年）、『憲法：重要問題と解説(増訂版)』（田口精一と共編、法学書院、1978年）、『ワークブック法学・憲法』（田中実と共編、有斐閣、1978年）、『憲法詳論』（山下威士と共編、尚学社、1989年）、『ドイツ法・ヨーロッパ法の展開と判例』（小島武司と共編、中央大学出版部、2000年）などがあります。

これらの著作は、憲法学の基礎から応用、さらには法学全般にわたり、彼の幅広い学識を示すものです。

まとめ

川添利幸氏は、日本の憲法学研究と中央大学の発展に多大な貢献をした傑出した法学者でした。教育者、研究者、そして大学経営者として、その生涯を通じて日本の学術界に大きな足跡を残しました。2022年8月22日、老衰により97歳で永眠しました。

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