川畠成道

川畠成道：視覚を失った天才ヴァイオリニスト

川畠成道（かわばた なりみち）は、1971年11月21日、東京都三鷹市に生まれました。彼は、視覚障害を持つヴァイオリニストとして、国内外で高い評価を受けています。彼の音楽は、深い感情と卓越した技術で聴衆を魅了し、多くの人々に感動を与え続けています。

生い立ち

川畠成道の父、正雄はヴァイオリン指導者でしたが、幼少期の彼にヴァイオリンをすぐに持たせることはありませんでした。8歳の時、祖父母とのロサンゼルス旅行中に風邪を患い、服用した風邪薬の副作用でスティーブンス・ジョンソン症候群を発症。一命は取り留めたものの、角膜を損傷し、視覚障害を負うことになりました。10歳でヴァイオリンを始めた彼は、わずか3年後の1984年、中学校1年生で全日本学生音楽コンクール東京大会中学生の部で3位に入賞。さらに同年、アイザック・スターンの公開レッスンに参加し、その才能をスターンに絶賛されました。

高校・大学時代

1987年、桐朋女子高等学校音楽科に入学し、江藤俊哉に師事。1990年には桐朋学園大学音楽学部に入学し、同年の日本音楽コンクールで3位を受賞しました。1994年に同大学を卒業。

イギリス留学

1994年9月、江藤俊哉の勧めで英国王立音楽院大学院へ留学。奨学金を得て、研鑽を積みました。1996年には同音楽院の協奏曲コンクールで1位を獲得。1997年には、同音楽院175周年記念コンサートでソリストとしてブルッフのスコットランド幻想曲を演奏し、その卓越した才能が認められ、「スペシャル・アーティスト・ステータス」の称号を授与されました。これは、同音楽院史上2人目の快挙であり、首席で大学院を卒業しました。

プロとしての活躍

1998年3月、サントリーホールで小林研一郎指揮の日本フィルハーモニー交響楽団とメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を共演し、日本デビューを果たしました。1999年12月にはファーストアルバムをリリースし、15万枚を売り上げる大ヒットとなりました。2000年9月にはロサンゼルス公演でアメリカデビュー、2002年9月にはカーネギーホールでのデビューを飾りました。

近年の活動

現在は、イギリスを拠点に海外、日本国内で活発な演奏活動を行っています。通常の演奏活動に加え、西アフリカ難民支援や赤十字チャリティーコンサートなど、平和と弱者に光を当てるチャリティー活動にも積極的に参加しています。2007年4月21日には、セルヴェニカス指揮のスロヴェニア国立マリボール歌劇場管弦楽団と共に、ヴォルフ＝フェラーリのヴァイオリン協奏曲を日本で初演しました。

ディスコグラフィー

川畠成道は、数多くのアルバムをリリースしています。

歌の翼に（1999年12月、ピアノ：ダニエル・ベン・ピエナール）
アヴェ・マリア（2000年12月、ピアノ：ダニエル・ベン・ピエナール）
愛の悲しみ（2001年12月、ピアノ：ダニエル・ベン・ピエナール）
哀愁のトリステ（2003年3月、ピアノ：ダニエル・ベン・ピエナール）
トロイメライ（2003年10月、ピアノ：ダニエル・ベン・ピエナール）
シャコンヌ（2004年2月）
川畠成道の「四季」（2005年12月、マルコ・ボーニ指揮ボローニャ歌劇場室内合奏団）
美しき夕暮れ Beau Soir（2007年3月）
The Best 川畠成道（2008年9月）

著作

著書も出版しており、自身の経験や音楽への想いを綴っています。

僕は、涙の出ない目で泣いた。―視力障害の天才ヴァイオリニストがつかんだ人生の光（2000年12月）
魂の響き合うとき（2001年12月）
詩画集「天使の降りた街」（2001年12月）

テレビ出演

ドキュメンタリー番組などにも出演しており、その生き様が多くの人々に勇気を与えています。

テレビ東京『あかたのげん』
TBS『いのちの響』
日本テレビ『いつみても波瀾万丈』
NHK教育『きらっといきる』

エピソード

1999年11月27日、紀尾井ホールでのリサイタルで、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第7番の演奏中に弦が切れるというアクシデントに見舞われました。しかし、彼は冷静に対応し、観客に状況を説明した後、舞台袖で弦を張り替え、演奏を再開。見事な演奏を披露し、聴衆から大きな喝采を浴びました。このエピソードは、彼のプロフェッショナルとしての高い意識と、困難に立ち向かう強い精神力を象徴しています。

外部リンク

公式サイト
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