左翼テロ

左翼テロの理解と日本における影響

左翼テロとは、暴力的な手段を用いて資本主義体制を打倒し、社会主義国家の設立を目指すテロリズムの一形式です。この思想の根底には、マルクス主義や他の共産主義、社会主義の影響が色濃く見られます。例えば、19世紀のロシアにおける反体制組織「人民の意志」は、政治的な主張を広める目的でアレクサンドル2世を暗殺しました。こうした歴史は、左翼テロの背景を理解するうえでの重要な一例です。

日本における左翼テロの歴史的背景

日本においては、ソビエト連邦との国交樹立以降、特に第二次世界大戦の終戦まで、共産主義者に対する厳しい取り締まりが行われました。治安維持法により、共産主義の脅威が増大したことも影響し、1922年のコミンテルン世界会議における「君主制廃止」の決議が日本の皇室存続を脅かすものであるとの認識が広がりました。このような状況下で、治安維持法は共産主義に基づく暴力的な活動を抑制するために制定されました。

1969年には、同志社大学で過激派セクト「共産主義者同盟赤軍派」が結成され、警察への襲撃やよど号ハイジャック事件という重大なテロ行為を引き起こしました。また、同セクトの残党は極左の革命左派と合流し、連合赤軍を結成。1972年に起こった「あさま山荘事件」は、彼らのテロ行為のなかでも特に有名な事件の一つです。その際、管理人の妻を人質とし、立てこもりが発生しました。さらに、内ゲバによるリンチ殺人（山岳ベース事件）の発覚により、連合赤軍の残虐性が広く知られるようになりました。

これ以降、日本における極左セクトは影響力を失い、1991年のソビエト連邦解体まで勢力を復活させることは困難でした。1989年のマルタ会談で東西冷戦が終焉すると、多くの左翼テロ組織はそれまでの闘争目標を見失い、活動が衰退しました。現在では新規メンバーの加入が少なく、残存するメンバーの高齢化が進む一方で、テロ行為よりも組織の維持や拡大に重点が置かれています。特に、反原発運動や貧困問題、環境問題への取り組みを通じて、一般市民からの支持を獲得しようとしています。

例えば、2008年から2009年にかけて東京都内で設置された年越し派遣村は、失業問題や格差についての社会的関心を高めました。中核派はこの情勢を「100年に一度の革命情勢」と捉え、革マル派や革労協とともに労働問題に関与することで、活動家を組織に引き込もうとしています。

2011年の福島第一原発事故が発生した際にも、これらの極左団体は素早く反応し、政府や東京電力の対応を批判し、原発停止を訴える運動を展開しました。また、それに伴い現地での災害支援活動も行いました。

日本の左翼テロの特徴

日本の左翼テロと右翼テロの間には大きな違いが存在します。酒井信彦の指摘によれば、右翼テロは主に単独犯による的を絞った攻撃が多い一方、左翼テロは無関係な一般市民を巻き込む事件が多く、ハイジャックや爆破事件がその具体例です。例えば、三菱重工爆破事件、よど号ハイジャック事件などが挙げられます。

さらに、左翼テロの歴史は、2011年時点では若い世代にはほとんど知られていないという現状があり、メディアがこれらの事件についてあまり報じてこなかったことが一因ともされています。メディアと左翼勢力の関係が指摘され、信息の偏りへの懸念もあります。

今後の左翼活動については、特に国際的な連携が重要な要素となるでしょう。日本の左翼過激派は、海外の反戦団体や労働団体と密接に協力し、共通の目標を持つ活動家との連携を模索しています。中核派がアメリカの労働団体や反戦団体、韓国の労働団体と関係を築いていることは、その一例なのです。

もう一度検索