左近允尚正

左近允 尚正 (さこんじょう なおまさ)

左近允 尚正は、1890年6月6日に鹿児島県で生まれた日本の海軍軍人で、最終的には中将の階級に達しました。彼の父は逓信省の官吏であり、家族環境の影響もあってか、若い頃から軍事に関心を持っていました。1909年に海軍兵学校に入学し、1912年に卒業。彼はその後、海軍少尉に任官し、着実に昇進を重ねました。また、同期の同士からは「豪壮、恬淡、薩摩隼人の典型」であると評されました。

第二次世界大戦が勃発した1941年時には、タイ王国の大使館付武官を務め、戦局が進む中で1943年9月に第二南遣艦隊第16戦隊の司令官に就任しました。この地位において彼は重巡洋艦「利根」を指揮することとなり、特に1944年3月にはサ第一号作戦を指揮しました。この作戦において彼の名前が冠されることになりますが、後にこの作戦は歴史的に大きな物議を醸すこととなります。

サ第一号作戦の一環として、「利根」に命じ、インド洋でイギリスの商船「ビハール号」を撃沈した際に捕虜が生じました。この捕虜の扱いについて、左近允はその殺害を命じたことが戦後大きな問題となり、彼と艦長の黛治夫はBC級戦犯として起訴される運命を辿りました。1947年のイギリス軍の香港裁判では、左近允は絞首刑にされ、黛は禁錮7年の判決を受けました。

裁判では、左近允自身は、作戦実施中の命令だったと主張し、捕虜に対する殺害は自身が指示したものではないと述べていました。一方で、黛は左近允の命令によるものであると主張し、責任のなすりつけ合いが起こっていました。この事件は軍事裁判における責任の取り扱いとしても注目されており、高須四郎大将が病死していたため、代行として責任を問われたとの指摘もあります。

左近允の私生活を通して見ると、彼には二人の息子がいました。長男の正章は海兵68期として戦死し、次男の尚敏は海上自衛隊に入り、海将にまで上り詰めました。

1948年1月21日、左近允は香港のスタンレー監獄で絞首刑にされます。彼の最後に詠んだ辞世の句「絞首台何のその　敵を見て立つ艦橋ぞ」は、軍人としての覚悟と誇りを示す言葉として今なお語り継がれています。

栄典

左近允はその軍歴の中で、数度にわたって栄典が授与され、1914年には正八位、1916年には従七位に昇格しました。彼の最後は悲劇的でしたが、彼の軍人としての歩みとその責任感は日本の歴史に記憶されています。

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