巨人傳

『巨人傳』（きょじんでん）について

『巨人傳』は、1938年に公開された日本の長篇劇映画で、伊丹万作が脚本・監督を担当しました。この作品は、フランスの作家ヴィクトル・ユゴーの名著『レ・ミゼラブル』を元にした物語で、伊丹自身の手で脚色されています。重要な点として、この映画は伊丹の最後の監督作であり、彼のキャリアにおける集大成とも言える作品です。

略歴と制作の背景

伊丹万作は、片岡千恵蔵プロダクションで監督デビューを果たし、その後さまざまな映画を制作してきました。1937年には、京都のゼーオー・スタヂオで著名なドイツの映画作家アーノルド・ファンクと共に『新しき土』を監督し、その後、同スタジオが東宝映画と合併する際に東宝映画東京撮影所に移ります。この場所で彼が手がけたのが本作『巨人傳』です。

主演には、日活京都撮影所から移籍してきた大河内傳次郎が起用され、彼のほかにも原節子が出演しています。原はすでに17歳ながら本作において重要な役どころを担っています。清家龍馬役には新人の佐山亮が選ばれ、彼も映画界に初めてデビューしました。さらに新協劇団からは多くの俳優がゲスト出演し、特に島田敬一は本作が初めての映画出演です。

物語のテーマ

『巨人傳』は、西南戦争に焦点を当てた物語で、ユゴーの『レ・ミゼラブル』を下敷きにしています。映画は「大河内傳次郎東上第一回超大作」として宣伝されましたが、公開時の評価は必ずしも良くありませんでした。また、本作の中で、佐山演じる龍馬が原演じる千代を訪れるシーンが際立った印象を残したという声もありました。

伊丹万作の晩年

映画公開後、伊丹は健康を害し7年間の病床生活に入ります。この時期に、彼は自らの撮影にかけた労力を無駄にしたと感じていたとされます。映画『無法松の一生』においては脚色を手がけましたが、監督としては本作が最後となりました。1946年には、満46歳でこの世を去っています。

現存する上映用プリント

現在、本作の上映用プリントが127分の尺で現存しており、東京国立近代美術館フィルムセンターでは、異なる長さの35mmフィルムが所蔵されています。このように、伊丹の足跡を残す作品は、映画史においても重要な位置を占めています。

スタッフと作品データ

• - 製作: 森田信義
• - 監督: 伊丹万作
• - 脚本: 伊丹万作
• - 撮影: 安本淳
• - 音楽: 飯田信夫

上映時間は127分で、白黒映画の形式が採用されています。また、初回興行は有楽町の日本劇場で行われました。異なるキャストによる多彩なパフォーマンスが、作品を一層魅力的にしています。

参考文献

本映画に関する詳しい情報は『伊丹万作全集 第3巻』や『映画作家伊丹万作』などの文献からも得られます。

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