巨済 (敷設艇)

巨済(きょさい)：日本海軍敷設艇の生涯

巨済は、日本海軍が保有していた測天型敷設艇の3番艦です。艦名は、当時日本が統治していた巨済島に由来しています。1939年12月27日、東京石川島造船所で竣工し、佐世保鎮守府に所属しました。

太平洋戦争開戦時、巨済は鎮海防備隊に所属し、呉鎮守府の指揮下で活動。内海において機雷敷設や防備網構築に従事しました。翌年には鎮海防備戦隊に復帰し、同海域での活動を継続しました。

1944年3月から8月にかけては、サイパンやトラック方面の船団護衛任務に就きました。その後鎮海に戻った巨済は、同年12月23日、佐世保鎮守府部隊に編入され、対馬海峡方面での活動を続けました。1945年6月には横須賀に入港し、終戦まで同海域で活動しました。

終戦後の1945年9月15日、巨済は除籍されました。しかし、その役目は終わりませんでした。復員輸送艦として新たな任務を担い、10月13日、モートロック諸島から浦賀への復員輸送を開始しました。その後も、ヤップ島～浦賀間、パラオ～浦賀間をそれぞれ往復し、更には上海～佐世保間を5往復、葫芦島～博多間を5往復、そして鹿児島～奄美大島間の帰還輸送を3往復と、多くの復員兵の帰郷を支えました。

復員輸送任務の最中、1946年6月6日から8日にかけては、御前埼灯台付近で座礁した海防艦「国後」の救援活動にも参加。乗員を収容し、浦賀まで輸送するという人道的な活動も行っています。

1946年12月30日、巨済は復員輸送任務を終え、特別保管艦に指定。1947年1月7日より横須賀長浦港に係留されました。しかし、巨済の艦歴はここで終わりを迎えます。同年9月、第四次賠償艦としてイギリスに引き渡され、売却されました。そして、1948年2月3日、塩釜の東北船渠で解体され、その生涯を終えました。

巨済の歴代艦長には、艤装員長として宇津木秀次郎少佐、敷設艇長として山本了夫大尉、そして復員官として保坂博大尉が名を連ねています。

巨済と同型艦には、測天、白神、成生、浮島が存在しました。これらの艦艇も、それぞれの艦歴を刻み、日本海軍の歴史に名を遺しています。巨済の艦歴は、太平洋戦争下の激動の時代と、戦後の混乱期における復員支援という、日本の歴史における重要な転換期を象徴するものです。その短いながらも波乱に満ちた歴史は、後世に語り継がれるべき貴重な記録と言えるでしょう。

参考文献

雑誌『丸』編集部 編『写真 日本の軍艦 第14巻 小艦艇Ⅱ』光人社、1990年9月1日
防衛庁防衛研究所戦史室『戦史叢書 海軍軍戦備<1> 昭和十六年十一月まで』朝雲新聞社、1969年11月1日
* 志賀博（旧姓・保坂、特別輸送艦「巨済」艦長）『最後のネービーブルー 回想の復員輸送艦秘話』光人社、1989年10月2日

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