巻線形三相誘導電動機

巻線形三相誘導電動機の解説

巻線形三相誘導電動機は、三相交流電源によって駆動される電動機の一種です。かご形三相誘導電動機と比較して、回転子巻線がスリップリングとブラシを介して外部回路に接続されている点が大きな特徴です。この接続により、回転子巻線の電流を制御することで、電動機の速度やトルクを調整できます。

構造

回転子には、全スロットに均等に配置された巻線が埋め込まれています。これらの巻線の端子は、回転軸上に設置された3個のスリップリングに接続され、ブラシを通して外部回路と接続されます。この外部回路を二次側回路と呼び、抵抗や他の電気機器を接続することで、電動機の特性を制御することが可能になります。

特徴

巻線形三相誘導電動機は、かご形誘導電動機と比べていくつかの特徴を持ちます。

優れた始動特性: 大きな始動トルクを得ることができ、重い負荷の起動にも適しています。
速度制御の容易さ: 二次側回路の制御により、幅広い速度範囲で運転できます。
保守の必要性: スリップリングとブラシは摩耗するため、定期的な保守点検が必要です。
運転特性の複雑さ: かご形誘導電動機に比べて、運転特性が複雑で、制御が難しい場合があります。

速度制御法と始動法

巻線形三相誘導電動機の速度制御には、主に以下の方法があります。

二次励磁法

回転子巻線に電流を供給することで、電動機の速度を制御します。この方法では、二次側回路から回生電力を得ることができ、エネルギー効率の向上に繋がります。

静止セルビウス方式: サイリスタを用いて、回生電力を電源に返します。
クレーマー方式: 回転軸に直結した整流子電動機を用いて、回生電力を回収します。

二次抵抗法

二次側回路に抵抗を挿入することで、回転子電流を変化させ、速度とトルクを制御します。始動時には大きなトルクを得ることができ、負荷の大きさによって抵抗値を調整することで、滑らかな始動を実現できます。しかし、速度を下げるほど損失が増加する欠点があります。

ゲルゲス現象

巻線、スリップリング、ブラシの不良などが原因で、二次側の一相が開放され単相運転状態になると、ゲルゲス現象が発生する可能性があります。この現象は、電動機が同期速度の1/2で加速できなくなることを指します。そのまま運転を続けると、大きな電流が流れ、電動機の焼損につながる危険性があります。

仕様

巻線形三相誘導電動機の仕様は、定格出力、定格電圧、定格電流など、さまざまな要素によって決定されます。重要な要素の一つに「滑り」があります。滑りは、トルク一定の負荷下で回転しているときに、二次抵抗を大きくすると増加します。

まとめ

巻線形三相誘導電動機は、速度制御が容易で大きな始動トルクを得られる反面、保守が必要で運転特性が複雑な電動機です。用途に応じて適切な制御方法を選択し、定期的な保守を行うことで、安全かつ効率的に運用することが重要です。

関連項目

かご形三相誘導電動機
巻線形三相誘導発電機

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