整流子電動機

整流子電動機とは

整流子電動機（commutator motor）は、回転する電機子に流れる電流の方向を、回転位相に応じて機械的に切り替えることで、回転モーメントを一定方向に維持する電動機です。この切り替えを行うために、整流子とブラシという部品が用いられます。電機子は巻線によって構成された電磁石であり、電流が流れることで磁界を発生させ、回転運動を生み出します。

構造

整流子電動機は、主に以下の要素で構成されています。

回転子: 回転する電機子部分。
固定子: 固定された界磁部分。
整流子: 電流の方向を交替させる回転スイッチの役割を担う。
ブラシ: 整流子と接触し、電機子へ電流を供給する部分。

動作原理

整流子電動機の動作原理は、フレミングの左手の法則に基づいています。電機子に電流が流れると、磁界との相互作用によって力が生じます。整流子とブラシの働きにより、電機子コイルには常に磁界に対して同じ向きの電流が流れるため、回転力が一定方向に保たれ、継続的な回転運動が得られます。

分類

整流子電動機は、使用する電源や界磁の構成によって様々な種類に分類されます。

直流整流子電動機

直流電源で動作する整流子電動機です。

永久磁石界磁形整流子電動機: 界磁に永久磁石を使用するタイプです。
鉄心電動機: 玩具などに用いられる小型の電動機です。
無鉄心電動機（コアレスモータ）: 電機子に鉄心を使用しないことで、応答性が高く小型化が可能となり、携帯電話の振動モータなどに使用されます。
電磁石界磁形整流子電動機: 界磁に電磁石を使用するタイプです。
直巻整流子電動機: 電機子と界磁が直列に接続されており、始動トルクが大きい特徴から電気鉄道などに用いられます。
分巻整流子電動機: 電機子と界磁が並列に接続されており、回転数が安定しているため、ディーゼル機関車やエレベータなどに用いられます。
複巻整流子電動機: 直巻と分巻の両方の特性を併せ持ち、界磁チョッパ制御と組み合わせて電気鉄道などで使用されます。

交流整流子電動機

交流電源で動作する整流子電動機です。交流電源でも、整流子とブラシによって電機子に流れる電流の向きを切り替えることで回転運動を得ることができます。

仕様

整流子電動機の性能を表す主な仕様は以下の通りです。

トルク: 磁束と電機子電流の大きさに比例します。大きなトルクを得るためには、強い磁界と大きな電流が必要となります。
出力: 回転速度とトルクの積に比例します。高い出力を得るためには、高速回転と大きなトルクの両立が求められます。

歴史

整流子電動機は、1832年にウィリアム・スタージャンによって直流整流子電動機が発明されたことに始まります。この発明は、現代の電動機の基礎となる重要な一歩でした。

関連項目

無整流子電動機: ブラシと整流子を使用しない電動機で、より高効率でメンテナンスの手間が少ないなどの利点があります。
整流子機の電機子反作用: 電機子の電流によって発生する磁界が、主磁界に影響を与える現象です。この影響は、電動機の性能に影響を与えるため、設計において考慮する必要があります。
抵抗制御: 電動機の速度制御に使われる方式の一つで、回路に抵抗を挿入して電流を調整します。

整流子電動機は、その構造と動作原理から、幅広い用途で使用されてきました。しかし近年では、より効率の良い無整流子電動機の登場により、用途が限定されつつあります。

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