市古宙三

市古 宙三（いちこ ちゅうぞう）は、日本の学術界において、中国史学、特に近現代史研究の第一人者として多大な功績を残した研究者です。1913年（大正2年）6月19日、山梨県に生を受け、2014年（平成26年）6月21日に101年の生涯を閉じました。お茶の水女子大学名誉教授として、後進の育成と研究の推進に尽力しました。

経歴

市古氏の学問の道は、日本の最高学府である東京帝国大学文学部東洋史学科から始まりました。ここで専門分野の基礎をしっかりと築き、1937年に卒業しました。卒業後、彼は東亜研究所の書員として実務に携わりました。

第二次世界大戦後、日本の教育・研究体制が新たな局面を迎える中、市古氏は1951年にお茶の水女子大学に助教授として着任しました。以後、同大学において重要な役割を担うこととなります。1957年には教授に昇進し、中国史研究のリーダーとして活躍しました。大学運営にも積極的に参画し、1969年から1971年まで文教育学部長、1972年からは附属図書館長を務め、教育環境の整備にも貢献しました。

1976年には、お茶の水女子大学の最高責任者である学長に就任。大学のさらなる発展のために尽力し、1979年に定年退官するまでその任を務め上げました。退官後、長年の功績を称えられ、同大学の名誉教授の称号が贈られました。定年後もその情熱は衰えず、同年4月からは中央大学教授として新たな舞台で研究と教育を続けました。

市古氏は2014年6月21日午前5時10分、老衰のため101歳で安らかに永眠しました。

研究内容・業績

市古氏の専門は、主に中国近代史です。アヘン戦争に始まる清末から、辛亥革命、中華民国を経て、戦後に誕生した中華人民共和国に至るまで、激動の近現代中国史をその研究対象としました。歴史の複雑な変遷と多様な側面を深く洞察し、多くの重要な研究成果を発表しました。その業績は、中国史研究の分野において、現在も高く評価されています。

委員・役員ほか

学術振興のための活動にも積極的に参加し、東洋文庫の近代中国委員会員としても貢献しました。

受賞・栄典

長年にわたる学術研究および教育への功績が認められ、1985年には日本国の栄典である勲二等瑞宝章を受章しました。

家族・親族

市古氏の家族には、著名な学者として知られる兄の市古貞次氏がいます。貞次氏は中世日本文学の研究者であり、兄弟で異なる分野ながら、それぞれの学術領域で重要な足跡を残しました。

著作

市古氏の学術的業績は、数多くの著作として広く知られています。惜しくもinput情報には単著の具体的な書名は記されていませんが、共著や編著、訳書として以下のものが挙げられます。

共著・編著
『中国研究文献案内』（J.K.フェアバンク共著、東京大学出版会、1974年）
『近代中国・日中関係図書目録』（編、汲古書院、1979年）

訳書
J・K・フェアバンク著『中国』（上巻：社会と歴史、下巻：アメリカと中国、東京大学出版会(UP選書)、1972年）

記念論集・回想

市古氏の学術的貢献と人柄を偲び、あるいは研究成果を記念した論集なども刊行されています。

『論集近代中国研究』（市古教授退官記念論叢編集委員会編、山川出版社、1981年）
『アジア史論叢 市古宙三教授古稀記念』（白東史学会編、刀水書房、1984年）
『近代中国研究と市古宙三』（東洋文庫近代中国研究班編、汲古書院、2016年）

資料

市古氏に関する詳細な情報や追悼の言葉は、以下の資料に収められています。

「市古宙三先生年譜・業績」『近代中国研究彙報』第37号、2015年、5-14頁。
毛里和子「追悼 市古宙三先生：異端の研究者を偲んで」『お茶の水史学』第59号、177-181頁、2015年。

これらの情報源に加え、デジタル版日本人名大事典などでもその経歴や業績が紹介されています。

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