汲古書院

汲古書院:日本の学術研究を支える出版



汲古書院は、昭和44年(1969年)に創業された日本の学術出版社です。その歴史は、中国古典や学術図書の輸入を手がけていた「大安」の事業を引き継いだことに始まります。以来、半世紀以上にわたり、日本の学術研究に貢献する数々の書籍を世に送り出してきました。

出版分野と特徴



汲古書院の主要な出版分野は、書誌学中国学、日本古典文学(上代から近世まで)、そして国語学(訓点語、音韻、語彙、学史など)です。近年は、儒教道教仏教学、史学(国史、東洋史)といった分野にもその活動領域を広げており、人文科学、社会科学の幅広い分野をカバーする出版社となっています。

同社の刊行物は、学術研究の上で高い信頼性と権威性を持ち、大学図書館や研究機関に広く所蔵されています。特に、古典籍の影印や、書誌学に関する専門書は、他社にはない強みとなっています。

著名な研究者との関わり



汲古書院の設立には、古典籍の影印、目録学書誌学の分野で多大な業績を残した長沢規矩也氏が深く関わっています。長沢氏の編纂による『図書学辞典』は、現在も書誌学を専攻する学生や図書館員、司書にとって必携の書として高く評価されています。また、同氏が解題・編纂に関わった『和刻本正史』『和刻本漢籍随筆集』『足利学校秘籍叢刊』『和刻本書画集成』『和刻本漢詩集成』といったシリーズも、汲古書院の代表的な刊行物です。

さらに、角筆文献研究で知られる小林芳規氏の著作も多数刊行しており、小林氏の研究は1991年に日本学士院賞と恩賜賞を同時受賞するなど高い評価を得ています。

また、渡邉義浩氏編による『全訳後漢書』全19冊や、田仲一成氏の『中国地方戯曲研究 元明南戯の東南沿海地区への伝播』など、近現代の重要な研究成果も出版しています。これらの刊行物は、それぞれの分野における研究を大きく前進させる役割を果たしました。

学術雑誌『汲古』



汲古書院は、書誌学論文を掲載する学術雑誌『汲古』を古典研究会と共同で年2回発行しています。この雑誌には、最新の書誌学研究成果だけでなく、汲古書院が刊行した書籍の紹介も掲載されており、同社の活動内容を知る上で貴重な情報源となっています。

出版社としての役割



汲古書院は、単に書籍を出版するだけでなく、日本の学術研究を支える重要な役割を担っています。貴重な古典籍を後世に残すための影印事業や、専門性の高い研究書の刊行を通じて、学問の発展に貢献しています。その活動は、日本の学術文化の継承と発展に欠かせないものとなっています。

社名と商標



汲古書院の社名と商標は、書家・金石学者の西川寧氏による書です。西川氏の洗練された書風は、同社の知的で高尚なイメージを象徴しています。

今後の展開



汲古書院は、今後も人文科学、社会科学の分野における質の高い研究書を刊行し、日本の学術研究の発展に貢献していくでしょう。古典籍のデジタル化といった新たな取り組みにも積極的に取り組むことで、さらなる発展が期待されます。

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