市川正一 (社会運動家)

市川 正一：日本共産党の戦前幹部

市川正一（いちかわ しょういち、1892年3月20日 - 1945年3月15日）は、日本の戦前における日本共産党の重要な幹部でした。山口県宇部市出身で、彼の活動は戦前の非合法時代に深く関わっていました。市川は、多くの逮捕や懲役を経験しながらも、最後まで信念を貫いたことで知られています。

生い立ちと教育

市川は1892年に山口県の宇部村に生まれました。彼の教育の道は、山口県立山口中学を卒業し、広島高等師範学校に入学するところから始まります。しかし、2年後に中退し、早稲田大学予科に転入。1916年には早稲田大学の英文科を卒業し、読売新聞社の社会部に記者として就職しました。しかし、1918年には軍部の干渉に反発し、退社。その後、いくつかの新聞社で勤務を続ける中で、次第に社会主義に関心を持ち始めます。

日本共産党への参加

1920年に彼は国際通信社に入社し、社会主義の研究を開始しました。1922年には、雑誌『無産階級』を創刊し、翌年には日本共産党（第一次共産党）に入党しました。しかし、彼の活動はすぐに厳しい弾圧に遭い、1923年の第一次共産党事件では治安警察法違反で逮捕され、1926年には懲役8ヶ月の実刑判決を受けました。

市川は党内でも重要な役割を果たし、1924年から1934年まで党理論雑誌『マルクス主義』の編集に関わり、また、党の公式紙『無産者新聞』の主筆となります。1926年の第3回党大会では再建された第二次共産党の中央委員に選出され、さらに党中央常任委員となり、宣伝部の責任者としての役割を追求しました。1928年のコミンテルン第6回大会には党代表として出席し、国際的な共産主義運動に貢献しました。

逮捕と苦難

1934年には控訴審で無期懲役の判決を言い渡されましたが、在獄中でも彼は活動を続け、1935年のコミンテルン第7回大会では執行委員に選出されました。市川は、約2ヶ月にわたる拷問に耐えながらも、公判では支配階級を厳しく糾弾し、最後には自身の信念を貫いて日本共産党の党史の意義を強調しました。その陳述内容は、後に『日本共産党闘争小史』として出版されることになります。

最期の日々

1945年3月15日、彼は宮城刑務所で肺の病気や腸の異常を抱えながら死去しました。享年54歳の市川は、最後の瞬間まで自らの信念を貫き通し、転向せずにその生涯を終えました。彼の逮捕や収監中の苦闘は、特に有名で、栄養失調の状態で困難な食事を工夫しながら生き延びようとした話は、彼の精神力を物語っています。また、網走刑務所では肺炎にかかり医師から死亡宣告されるも、僧侶の読経の最中に昏睡から目を覚ましたという逸話も残されています。

家族と遺産

市川の家族には、警察官での活躍やその後の社会運動に関与した弟の市川義雄もおり、彼もまた日本共産党で重要な役割を担っていました。市川正一の名は、彼の出生地である山口県光市にある記念碑を通じても伝えられています。この記念碑は、彼の没後27年目に建立され、その命日である3月15日には毎年、党の行事が行われています。

市川正一の人生は、日本における共産主義の歴史において重要な位置を占めており、彼の信念や行動は、後の世代に大きな影響を与えるものとなりました。

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