市来乙彦

市来 乙彦の生涯と業績

市来乙彦（いちき おとひこ）は、1872年4月13日に旧薩摩藩士の三男として鹿児島県に生まれました。彼の教育はしっかりとしたもので、1896年に帝国大学法科大学政治学科を卒業した後、大蔵省に入省し、キャリアをスタートさせました。その後、彼は主税局に配属され、さまざまな役職を歴任しました。

1903年には主計局予算決算課長を兼任する形で、彼の名前が全国的に知られるようになりました。1911年に主計局長としての役割を果たし、1916年から1918年にかけては寺内内閣において大蔵次官を務めました。その間に、1918年には貴族院の勅選議員にも任命され、政治の舞台でも重要な役割を担いました。

1922年、加藤友三郎内閣のもとで大蔵大臣に任命された市来は、第一次世界大戦後のインフレ対策において徹底した緊縮財政を実施。日本の経済を安定させるために、厳しい財政管理を続けました。この時期、彼の財政政策は後の日本に多大な影響を与えることとなります。

1923年には第10代日本銀行総裁に就任し、関東大震災による日本経済の危機的状況に立ち向かいました。彼は経済の復興に尽力し、金融恐慌が発生する中でも冷静な判断を下しました。1927年にはその任期を終え、日銀総裁を退任しましたが、彼のリーダーシップは多くの金融機関から高く評価されました。

その後、1928年には東京市長に就任。在任中は東京の財政再建に取り組み、都市の発展に寄与しました。1947年4月には無所属で第1回参議院選挙に当選し、1950年には緑風会公認で第2回参議院選挙に出馬するも落選し、政界から退きました。

栄典・叙勲

市来乙彦はその業績により数々の栄誉を受けており、1922年には従三位の位階を授与されました。また、1903年に勲六等瑞宝章を受章し、1918年には勲一等瑞宝章を、さらに1954年には勲一等旭日大綬章を受けています。これらの勲章は彼の国への貢献を証明するものです。他にも、1921年に第一回国勢調査記念章や1930年に帝都復興記念章も授与されています。さらに、1909年には大韓帝国から勲二等八卦章を受けています。

市来乙彦の人生は、政治と経済の両方において激動の時代における日本の歴史において重要な位置を占めています。彼が遺した財政管理に関する理念は、今日においても多くの関心を集め続けています。

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