布井良助

布井良助は、1909年神戸市に生まれ、神戸高等商業学校（現神戸大学）を卒業したテニス選手です。彼は1933年のウィンブルドン選手権男子ダブルスで佐藤次郎とペアを組み、日本人として初めて4大大会の決勝に進出しました。

布井は大阪の裕福な米穀商の長男として育ち、1932年の全日本テニス選手権男子シングルスで佐藤次郎を破って優勝しています。早くから佐藤にとって最大の親友でした。1932年の全豪選手権から1933年の全米選手権まで、4大大会に1度ずつ出場しています。

1933年の全仏選手権では、シングルス3回戦で敗退したものの、2回戦で強豪エイドリアン・クイストを破る活躍を見せました。ウィンブルドンでは、シングルスは2回戦で敗れましたが、佐藤次郎とのダブルスで決勝に進出。前年度優勝のフランスペア、ジャン・ボロトラとジャック・ブルニョン組と対戦し、第1セットを奪取するも、逆転負けで準優勝に終わりました。全米選手権ではシングルス4回戦まで進出しています。

デビスカップでは、日本代表としてヨーロッパ・ゾーンで戦い、ハンガリー、アイルランド、ドイツを破り準決勝に進出。準決勝ではオーストラリアに敗れましたが、布井はビビアン・マグラスに勝利しています。デビスカップでも佐藤とペアを組み、ジャック・クロフォードとエイドリアン・クイストの組に敗れています。

1934年、親友であった佐藤次郎がマラッカ海峡で自殺。布井は日本テニス界を去ります。その後、太平洋戦争に従軍し、ビルマ戦線へ。1945年7月21日、シッタン河畔で自ら命を絶ちました。36歳という若さでした。

布井と佐藤のペアが果たせなかった4大大会初優勝の夢は、1934年のウィンブルドン混合ダブルスで三木龍喜がイギリスのドロシー・ラウンドと組んで優勝したことで実現しました。また、2人が成し遂げられなかった日本人選手による4大大会男子ダブルス優勝は、22年後の1955年に宮城淳と加茂公成の組が全米選手権で達成しました。

参考文献
深田祐介著『さらば麗しきウィンブルドン』（文藝春秋、ISBN 4163400400、1985年）
日本テニス協会発行『テニス・プレーヤーズ・ガイド』 2006年版（105ページ・180ページ）

もう一度検索