布令弁護士

布令弁護士とは

布令弁護士とは、第二次世界大戦後、沖縄がアメリカ合衆国の施政下にあった時代に、米国民政府の布告によって弁護士資格を得た人々のことを指します。具体的には、日本本土の司法試験（戦前の高等文官試験司法科）に合格していなくても、米国民政府が定めた独自の基準を満たすことで弁護士として活動することが認められました。

布令弁護士制度の背景

沖縄がアメリカの統治下にあった当時、米国民政府は「琉球民裁判所」や「米国民政府裁判所」といった独自の司法機関を設置しました。これらの裁判所で活動する法律専門家を確保するため、米国民政府は、日本の司法試験合格者以外にも弁護士資格を与える制度を設けました。この制度は、軍政副長官による特別任用で判検事を5年以上経験した者、琉球政府法務局職員や弁護士事務所事務員として2年以上の勤務経験がある者、さらに高卒程度の学力を持つ者であれば受験可能な試験の合格者など、幅広い層に門戸を開いていました。そのため、行政書士などの他の資格と比較して、布令弁護士の資格取得は比較的容易であったと言えます。

復帰後の布令弁護士

1970年（昭和45年）には、沖縄の弁護士資格者に対する特別な措置を定めた「沖縄の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する特別措置法」が制定されました。この法律によって、布令弁護士の資格が維持されることになりました。沖縄が日本に復帰する前に正式な司法試験に合格していなかった布令弁護士は151名おり、彼らは法務省の司法試験管理委員会（現在の司法試験委員会）による選考を受けることになりました。この選考は、通常の司法試験よりも簡易な筆記試験形式で行われましたが、中にはモンテスキューの「法の精神」における三権分立さえ答えられない者もいたとされています。選考に合格した者は、日本全国で弁護士として活動することが認められ、選考に不合格だった者も、沖縄県内限定で「沖縄弁護士」という名称を使って弁護士業務を続けることが許されました。

布令弁護士制度の意義

布令弁護士制度は、沖縄がアメリカの施政下にあったという特殊な状況下で、法律専門家を確保するために設けられた制度です。この制度によって、多くの人々が法律専門家としてのキャリアを築くことができましたが、同時に、資格の取得基準や、復帰後の資格の扱いは、議論の対象となりました。しかし、この制度は、沖縄の歴史における重要な出来事であり、司法制度の多様性を示す一例として、歴史に刻まれています。

関連情報

アメリカ合衆国による沖縄統治
琉球列島米国民政府
琉球政府
裁判官
検察官
弁護士
司法試験
沖縄の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する特別措置法

外部リンク

* 沖縄県公文書館

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