帝辛

帝辛（ていしん）―殷の最後の王

概要

帝辛は紀元前1100年頃に治めた殷の最後の王であり、一般には紂王として知られています。彼はその暴虐や放蕩な生活から、後世に「暴君」として名を刻むこととなります。

生い立ち

帝辛は帝乙の末子で、異母兄には微子啓と微仲衍がいます。また、彼の子には武庚禄父がいます。史書によると、彼はその美貌や賢さ、身体能力に恵まれていましたが、その才能を持ってさらに権力を増長させ、その結果として暴君扱いされることになります。

治世の様子

権力の増長

彼は美貌や卓越した弁舌で臣下たちを愚鈍に見せつけ、特に忠告を軽視した結果、傲慢さが増しました。帝辛は自らを「天王」と名乗るようになり、神への祭祀をおろそかにし、重税をかけて私利私欲に走りました。特に彼は愛妾の妲己に溺れ、酒池肉林を作り出して享楽に耽ったことで悪名高くなります。

酒池肉林の逸話は、彼が肉を吊るして酒を溜めた池で贅沢な宴会を開いたことに由来します。この豪華な宴会は、他の王や卿たちを一切顧みないものでした。

賢者の諫言

親戚の箕子や比干といった賢者たちが彼に忠告を試みましたが、すべて受け入れられることはありませんでした。特に比干は彼の残虐な行為をたしなめると、逆に命を落とすことになりました。彼の暴政は臣下の恐怖を生みました。

繁栄と凋落

了しては多くの将軍や貴族が反発し、後に周の武王が立ち上がりました。武王は帝辛を討つために軍を起こし、ついには牧野の戦いで殷軍を大敗させました。当時の殷軍は奴隷が多く、戦意がなかったため、周が攻め入るのを待ち望んでいた状況でした。

最期

帝辛は敗北を受けて首都朝歌に逃げ込み、最終的には鹿台にて焼身自殺を果たします。その後、彼の遺体は武王によって斬首されました。

評価と伝承

帝辛の行動や性格に関する評価は分かれており、暴君として描かれることが多いですが、後の世に描かれた物語としての色合いも強いです。

孔子の弟子である子貢は、殷の紂王について「その悪行は世間で言われているほどではなかったのではないか」と述べていることからも、彼に対する評価は歴史的にも様々でした。

また、酒池肉林と言われる行為は、神を降ろすための儀式であったとの説も存在し、真相は依然として不明な部分が多いです。彼の逸話は後の悪名高い暴君のモデルとなり、特に夏の桀と対比されて語られることが多いです。

物語の中の帝辛

『封神演義』などの作品にも広く登場し、神話的な存在として描かれています。日本の物語でも妲己との関連が描かれ、彼の名は今もなお語り継がれています。彼の伝説は国や時代を超えて多様な形で受け継がれているのです。

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