帰脾湯

帰脾湯（きひとう）は、中国の医学書『済生方』を出典とする漢方薬です。体力が中程度以下で、顔色が悪く、精神的な不安や出血傾向を伴う虚弱体質の方に適しています。補気（体のエネルギーを補う）、補血（血を補う）を目的として用いられ、貧血、不眠、神経症、健忘などの症状の改善に効果が期待できます。

構成生薬

帰脾湯は、以下の12種類の生薬から構成されています。

黄耆（オウギ）：気を補い、体力を高める
白朮（ビャクジュツ）：胃腸の働きを助け、水分代謝を改善する
茯苓（ブクリョウ）：精神安定作用、利尿作用
遠志（オンジ）：精神安定作用、鎮静作用
甘草（カンゾウ）：炎症を抑え、痛みを和らげる、調和作用
木香（モッコウ）：気の巡りを良くし、消化を助ける
当帰（トウキ）：血を補い、血行を促進する
酸棗仁（サンソウニン）：精神安定作用、不眠を改善する
竜眼肉（リュウガンニク）：血を補い、精神を安定させる
人参（ニンジン）：気を補い、体力を高める
大棗（タイソウ）：胃腸を保護し、体力を補う
生姜（ショウキョウ）：体を温め、消化を助ける

適応する症状

貧血
不眠
神経症
健忘
精神不安
顔色が悪い
食欲不振
疲労感
動悸
めまい

副作用

帰脾湯は比較的安全な漢方薬ですが、まれに副作用が現れることがあります。

重大な副作用
偽アルドステロン症：血圧上昇、むくみ、脱力感など
ミオパシー：筋肉の痛み、脱力感など
その他の副作用
発疹
蕁麻疹
食欲不振
胃部不快感
悪心
腹痛
下痢

服用上の注意

高齢者は生理機能が低下しているため、慎重に服用する必要があります。
妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性、小児に対する安全性は確立されていません。
他の医薬品や漢方薬との相互作用に注意が必要です。服用前に医師または薬剤師に相談してください。

関連処方

加味帰脾湯（かみきひとう）

帰脾湯に柴胡（サイコ）と山梔子（サンシシ）を加えたもので、より精神的な症状（イライラ、焦燥感など）が強い場合に用いられます。

帰脾湯は、心身のバランスを整え、穏やかな状態を取り戻す手助けとなる漢方薬です。服用に際しては、専門家（医師や薬剤師）の指示に従い、体質や症状に合った適切な処方を受けることが大切です。

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