常呂山

常呂山（ところやま）は、北海道北見市の東部に位置する山です。標高は480.8メートルと、他の著名な高山と比較すればそれほど高い山ではありませんが、その独立した山容と地域の歴史に根差した存在として認識されています。山頂には、国土測量の重要な基準となる一等三角点「附子山」が設置されており、この地域の地形情報を定める上で重要な役割を担っています。

地理的には、北海道の広大な山脈の一つである北見山地の最東端に位置しています。周囲を比較的平坦な地形に囲まれているため、標高以上に際立って見える独立峰のような特徴を持っています。山体は標高の割に広く、どっしりとした安定感のある山容を呈しています。

山の名前「常呂山」は、かつてこの地域に存在した自治体名である常呂町（現在は北見市に編入）に由来しています。地域の名称がそのまま山の名前として定着した、地域と密接に結びついた山であることがうかがえます。さらに興味深いのは、山頂に設置された三角点に付けられた名前、「附子山（ぶしやま）」です。この「附子」という言葉は、強力な毒性を持つ植物として知られるトリカブトを意味します。実際に、常呂地域では古くからトリカブトが自生しており、採取も行われていたという記録が残っています。このことから、三角点名はこの地域の植物相や人々の暮らし、あるいは薬草（毒草）との関わりといった歴史的な背景と深く結びついている可能性が考えられます。

登山に関しては、一般的な観光地にあるような、明確に整備された登山道は設けられていません。しかし、積雪のない期間、すなわち無雪期には、多くの登山愛好家や地域住民によって登られています。主なアプローチ方法は、山腹に沿って通る「下附子林道」を利用することです。林道をある程度進んだ地点から、ルートを外れて山頂を目指すのが一般的な登山経路となります。ただし、林道の状態によっては、車両で入れる区間が限られる場合もあります。林道の入口から山奥まで常に車両が通行できるわけではないため、実際に登山を計画する際には、事前に林道の通行状況などを確認しておくことが賢明です。

常呂山は、標高こそ控えめですが、北見山地の東端に位置する独立峰のような特徴的な山容、旧自治体名や地域の植物に由来するユニークな名称、そして整備された登山道がない中で自然と向き合う登山スタイルといった多様な側面を持っています。これらの要素が組み合わさることで、常呂地域に根差した個性的な山として、その存在感を放っています。一等三角点「附子山」が設置されていることからも、地理的に重要な地点であると同時に、地域の自然や歴史を静かに物語る山と言えるでしょう。

もう一度検索