常徳院 (世田谷区)

常徳院：世田谷の静寂を守る古刹

常徳院は、東京都世田谷区宮坂にひっそりと佇む曹洞宗の寺院です。観谷山と号し、その歴史は室町時代に遡ります。

歴史

小田急線経堂駅から宮の坂方面へ歩を進めると、石畳の参道が目に飛び込んできます。本山を永平寺・總持寺とするこの寺院は、かつて「浄徳院」と呼ばれ、現在の船橋1丁目付近に位置していました。寺伝によれば、文明18年（1486年）に足利義尚が開基となり、益芝永謙を招いて開山、宮坂へと移転しました。

吉良氏関連の古文書には、吉良氏朝が十一面観音菩薩に立願し、仏供免田を寄進した記録が残されており、少なくとも元亀4年（1573年）には「浄徳院」が存在していたことがわかります。常徳院は小本寺格であり、経堂駅近くの福昌寺は末寺にあたります。

江戸時代には、松原土佐守弥右衛門が玄畝という僧侶を招き、屋敷内に福昌寺を建立しました。また、善徳院という末寺も存在しましたが、明治時代に常徳院へ合併され廃寺となりました。

明治時代の資料によると、常徳院は広大な境内を有し、多くの檀家を抱えていました。昭和初期までは雑木林に囲まれた静かな場所で、狐火が見られたという逸話も残っています。小田急線の開通以降、徐々に開けていきました。

本尊と文化財

本尊の十一面観音像は、慈覚大師円仁の作と伝えられています。毎年8月20日には「明けの観音」として開帳され、多くの参拝者で賑わいます。

境内には、本堂、鐘楼、庫裏などが配置されています。本堂は入母屋造で、江戸時代に編纂された『新編武蔵風土記稿』にも記述があり、少なくとも化政文化期以前に建立されたと推定されています。本堂の天井には、花鳥を描いた極彩色の板絵が143面も施されており、訪れる人々を魅了します。

鐘楼も本堂と同時期の建立とみられ、歴史を感じさせる佇まいです。

常徳院は、本尊の他にも十王像、達磨像、韋駄天尊像など、数多くの仏像を所蔵しています。これらの仏像は、常徳院の歴史と信仰の深さを物語っています。

地域との関わり

常徳院に隣接する常徳幼稚園は、昭和29年に創立され、「ほとけの子」としての保育と教育を実践しています。

常徳院の周辺は、かつて麦畑でしたが、乗泉寺が移転してきてからは、共に地域を見守る存在となっています。

アクセス

• - 所在地：東京都世田谷区宮坂2丁目1番11号
• - 交通：小田急小田原線経堂駅下車、徒歩7分

常徳院は、歴史と文化が息づく、世田谷の貴重な寺院です。ぜひ一度、足を運んでみてください。都会の喧騒を忘れ、静寂の中で心静かに過ごせるでしょう。

常徳院の十一面観音像は地域の人々から厚く信仰されており、その姿は多くの人々の心の支えとなっています。また、常徳幼稚園は地域に根ざした教育機関として、子供たちの成長を温かく見守っています。

常徳院は、過去からの歴史を大切にしながら、現代の地域社会にも貢献している寺院です。その存在は、世田谷の街に静かな彩りを添えています。

まとめ

常徳院は、足利義尚が開基と伝えられる歴史ある寺院であり、慈覚大師円仁作と伝わる本尊の十一面観音像は多くの人々に信仰されています。境内には本堂や鐘楼などの文化財があり、訪れる人々を魅了します。地域社会とのつながりも深く、幼稚園の運営などを通じて地域に貢献しています。世田谷を訪れる際には、ぜひ常徳院に立ち寄り、その歴史と文化に触れてみてください。

もう一度検索