常璩

常璩（じょう きょ、生没年不詳）は、東晋時代に活躍した歴史家であり官僚です。字は道将（どうしょう）。蜀郡江原県（しょくぐんこうげんけん）の出身で、地域を代表する名家でした。

生涯

常氏一族は代々江原県で勢力を持ち、従祖父の常寛（じょう かん）は西晋で主簿（しゅぼ）や別駕（べつが）といった官職を歴任しました。常璩は蜀の成都で育ち、幼い頃から学問を好んだと伝えられています。

304年、李雄（りゆう）が益州（えきしゅう）に成漢（せいかん）を建国すると、常寛はこれに降伏し、武平郡太守（ぶへいぐんたいしゅ）に任じられました。常璩自身も成漢に仕え、散騎常侍（さんきじょうじ）という官職に就きました。

347年、東晋の桓温（かんおん）が成都に侵攻し、都を包囲すると、常璩は李勢（りせい）に降伏を勧めました。李勢が降伏し、成漢が滅亡すると、桓温はその知識と才能を高く評価し、常璩を自身の参軍（さんぐん）として任用しました。

業績

常璩の最大の功績は、蜀の地方史である『華陽国志』（かようこくし）12巻を著したことです。また、成漢の歴史をまとめた『漢之書』（かんのしょ）10巻も著しました。『華陽国志』は、現存する中国の地方誌としては最古のものの一つであり、地域の地理、歴史、文化を知る上で非常に貴重な資料となっています。

『華陽国志』は単なる地方史にとどまらず、当時の社会情勢や人々の生活を描写しており、歴史的価値が非常に高いと評価されています。特に、成漢という短命に終わった政権の内情を知る手がかりとして、重要な役割を果たしています。

後世への影響

常璩の『華陽国志』は、後世の歴史研究に大きな影響を与えました。蜀地域の研究においては、欠かすことのできない基本資料であり、多くの研究者がこの書を参考に研究を進めています。また、地方史研究の先駆けとしても評価されており、中国各地で地方史が編纂されるきっかけになったとも言われています。

清末に編纂された『増修濯県志』には、「常道将の廃宅は治の南三十里在り」と記されており、常璩の一族が地域において大きな影響力を持っていたことが窺えます。

常璩は、激動の時代を生き抜き、歴史家として名を残しました。彼の著作は、現代においても重要な歴史資料として高く評価されています。

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