常陸国分寺

常陸国分寺の概要

常陸国分寺（ひたちこくぶんじ）は、茨城県石岡市府中に位置する真言宗智山派に属する寺院です。この寺は浄瑠璃山という山号をもち、院号は東方院です。寺院の本尊は薬師如来であり、地域における文化的・宗教的な中心として重要な役割を果たしています。

国分寺は、奈良時代に聖武天皇の詔によって全国で設立された国分寺群の一つで、常陸国の後継寺院にあたります。本文では、現存する寺院に加え、創建当時からの遺構である常陸国分寺跡と常陸国分尼寺跡についても詳しく見ていきます。

歴史

古代・中世

常陸国分寺の具体的な創建時期は不明ですが、『常陸府中鏡』によると天平15年（743年）に起工し、天平勝宝4年（752年）に完成したとされます。当時、国分寺には広大な寺領があり、『延喜式』の記録によれば、6万束の国分寺料が指定されるほどでした。

また、仁和4年（888年）に常陸国書生の飛鳥貞成が国分寺で盛大に供養を行った記録が残っています。次第に寺院は兵火や政治的な混乱にさらされ、平将門の乱や佐竹氏の戦火によって数度にわたり焼失しました。その後、長い間衰退の道を歩むこととなりました。

近世以後

中世末期頃には無住となりましたが、慶長年間（1596年-1615年）に近隣の千手院の住職が兼務するようになります。国分寺はその後も地域の文化財としての重要性を保ち続け、明治43年（1910年）には千手院の旧本堂を移築した新しい本堂が建設されました。

現在の国分寺は、古代の国分寺跡の上に位置しており、境内にはいくつかの重要な建物が存在しています。特に千手院から移築した薬師堂や、都々一坊扇歌堂、旧千手院の山門などが市指定文化財とされています。

境内の構成

国分寺の境内には、創建当初の遺構をもとにした多くの建物があります。旧本堂は1910年に設立され、薬師堂は金堂の位置に建っています。都々一坊扇歌堂は、都々逸の創作者を記念して建てられたもので、地域の文化を象徴しています。

また、山門は千手院の唯一の遺構として地域の歴史を物語っています。その他にも弘法大師堂などの堂宇が境内には存在しますが、過去の火災による損失も少なくありませんでした。

常陸国分寺跡と尼寺跡

常陸国分寺跡は、現国分寺の下に広がる寺域の中心的な場所にあたります。寺域の規模は東西約270メートル、南北約240メートルあり、伽藍には中門や金堂、講堂が整然と配置されていました。七重塔の位置は未確認ですが、塔心礎は現在国分寺内で保存されています。

対して、尼寺跡は国分寺の西北約600メートルに位置し、こちらも東大寺式の伽藍配置がなされていました。尼寺もまた戦火により焼失しており、その歴史は長いものとなっています。

文化財と現地情報

常陸国分寺跡と常陸国分尼寺跡は、いずれも国の特別史跡として指定されています。境内にある重要文化財には、旧千手院の山門や都々一坊扇歌堂、出土した古瓦などがあります。

国分寺までのアクセスは、JR常磐線の石岡駅から徒歩約10分であり、国分尼寺までの道のりはさらに徒歩で12分程度です。周辺には常陸国府跡や常陸國總社宮という文化財も点在しており、歴史を感じる散策が楽しめます。

もう一度検索