幕の内弁当

幕の内弁当とは

幕の内弁当は、白飯と数種類のおかずを組み合わせた日本を代表する弁当の一つです。その起源は江戸時代にまで遡り、長い歴史の中で様々な変遷を遂げてきました。現在では、駅弁やコンビニ弁当としても親しまれており、日本人の食文化に深く根付いています。

歴史

幕の内弁当のルーツは、江戸時代後期に芝居見物の際に役者や裏方のために作られた弁当にあります。当初は、握り飯に副菜を添えた簡素なものでしたが、次第に豪華になり、観客向けにも販売されるようになりました。この頃から、幕の内弁当は規格化され、量産されるようになったと言われています。

江戸時代末期には、握り飯に副食物を添えたものを「幕の内」と呼ぶようになり、その発祥は芳町にあった「万久」という店であるとされています。その後、幕の内弁当は芝居見物だけでなく、病人への見舞いや贈答用としても利用されるようになりました。

明治時代に入ると、幕の内弁当は駅弁としても普及しました。明治22年（1889年）には、姫路駅で「まねき」が握り飯に代わって幕の内弁当を導入したのが始まりとされています。当時は、12銭（現在の2000円から3000円程度）で販売されていたそうです。

駅弁は容器の回収が困難なため、使い捨ての経木折詰が用いられるようになりました。幕の内弁当は、弁当の代名詞として広く知られるようになり、単に「弁当」「御弁当」と呼ばれることも多くなりました。

第二次世界大戦後には、懐石風の高級な幕の内弁当が登場する一方で、デパートやスーパーマーケットでは、簡素な幕の内弁当も販売されるようになりました。20世紀末からは、地方色豊かな幕の内弁当や、特定の食材を重視した幕の内弁当も登場しています。現在でも、コンビニエンスストアなどで多様な弁当が販売されていますが、幕の内弁当は一定の人気を保ち続けています。

語源

「幕の内弁当」の語源には諸説あります。

芝居説: 芝居の幕間に観客が食べる弁当だったため、幕の内弁当と呼ばれるようになったという説。
役者説: 幕の内側で役者が食べる弁当だったため、幕の内弁当と呼ばれるようになったという説。
相撲説: 相撲取りの地位の一つである幕内力士に由来するという説。
店名説: 江戸にあった「万久（まく）」という店が販売していた弁当が由来という説。
戦陣説: 戦陣の幕の内で食べた携行食に起源を求める説。

これらの説の中でも、芝居説が有力とされています。

おおまかな定義

幕の内弁当の基本的な構成は、白飯と数種類のおかずです。

ご飯: 一般的には白飯が用いられます。炊き込みご飯や混ぜご飯を使用することもありますが、これは幕の内弁当と呼ぶか否かについては諸説あります。伝統的な幕の内弁当では、俵型のおにぎりが並べて詰められ、黒胡麻や梅干しが添えられています。現在では、おにぎりではなく、型押しで俵型に見せていることが多いです。
* おかず: 汁気のないおかずが少しずつ詰め合わせられるのが一般的です。焼き魚、玉子焼き、蒲鉾、揚げ物、漬物、煮物などが代表的なおかずです。幕の内弁当は、弁当という特性上、傷みやすいものは避けられます。また、一般的に高カロリーで脂質や塩分が多く、野菜類が少ない傾向があります。近年では、低カロリーで栄養バランスを考慮した幕の内弁当も登場しています。

幕の内弁当と類似した弁当として、松花堂弁当があります。松花堂弁当は昭和初期に誕生した比較的新しい様式の弁当です。

まとめ

幕の内弁当は、江戸時代から続く日本の伝統的な弁当です。白飯とバラエティ豊かなおかずの組み合わせは、長きに渡り多くの人に愛されてきました。その歴史や語源を知ることで、より深く幕の内弁当を楽しむことができるでしょう。

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