幕別温泉

幕別温泉について

幕別温泉は、北海道中川郡幕別町の依田地区に位置する温泉地である。十勝平野の中でも、幕別町札内地区を一望できる丘陵地に開けており、その高台からの眺望も魅力の一つとなっている。

泉質の特徴

この地の温泉は「モール泉」と呼ばれる、植物由来の有機物を多く含む珍しい泉質を持つことが最大の特徴である。源泉の色は施設によって異なり、濃厚な褐色や黄褐色を呈する。泉温は比較的高く、主要な施設では47℃から50℃に近い高温の源泉を利用している。

主要な二つの施設で提供される泉質は以下の通りである。

十勝幕別温泉グランヴィリオホテル: ナトリウム-塩化物泉（弱アルカリ性低張性高温泉）。源泉温度は47.2℃で、濃い褐色のモール泉である。
幕別温泉パークホテル悠湯館: ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉（弱アルカリ性低張性高温泉）。源泉温度は49.6℃、pHは8.6。黄褐色で無味無臭の湯であり、「琥珀のモール湯」と称されている。

両施設に共通するのは、かつて源泉温度が約30℃の冷泉を加熱して使用していた歴史を持つ点である。しかし、その後の1000メートルを超える深深度ボーリングにより、より高温で湯量豊富なモール泉を掘削することに成功し、現在の湯治環境が整えられた。

温泉街と施設

幕別温泉の温泉街は、札内地区を見下ろす丘陵地に形成されており、主に二つの宿泊施設が温泉施設を運営している。これらの施設は、周辺の豊かな自然環境と十勝平野の眺めを楽しむことができる立地にある。

十勝幕別温泉グランヴィリオホテル:
このホテルは、過去に国民宿舎幕別温泉ホテルとして親しまれた歴史を持つ。民営化されて以降は、札幌市の不動産会社である北海道振興が運営する幕別温泉ホテル緑館へと経営が引き継がれた。その後、民間への払い下げを機に地上12階建ての高層ホテルへと大規模に改修され、現在の姿に至る。特に最上階には宿泊者専用の展望風呂が設けられており、雄大な景色を眺めながらの入浴が可能である。また、1階には日帰り利用も可能な大浴場「華のゆ」が新設され、オンドル風の岩盤浴施設も併設されている。
なお、運営会社の北海道振興は2003年に経営破綻したが、その後ビジネスホテルチェーンを主力とするルートインジャパンに買収され、現在の「十勝幕別温泉グランヴィリオホテル」という名称に変更されている。

幕別温泉パークホテル悠湯館:
もう一つの主要な宿泊施設であり、前述のように「琥珀のモール湯」と名付けられた特徴的な泉質の湯を提供している。

温泉地のある丘の上やその周辺には、温泉施設の他にもいくつかの施設が点在している。町の歴史に関する展示やサケの生態を学ぶことができる幕別町ふるさと館、公園内に俳句が刻まれた岩が配置された十勝俳句村、バーベキューなどを楽しめる焼肉ガーデンなどがあり、温泉滞在と合わせて文化や自然に触れる機会が提供されている。

温泉地の歴史

幕別町の札内地区、特に途別川の流域や丘の麓では、大正時代から昭和初期にかけてすでに複数の冷泉が湧出していたことが知られている。このため、当時からいくつかの温泉旅館が開業と閉業を繰り返していたという歴史がある。その中の一つに、途別川の河畔に存在した黒田温泉があり、歌人として知られる若山牧水もこの地を訪れたことがあるとされる。
長年にわたる温泉利用の歴史を経て、1977年（昭和52年）5月31日には環境庁告示第23号により、国民保養温泉地としての指定を受けている。

アクセス

鉄道を利用する場合、JR根室本線の帯広駅から路線バスに乗り換え、約25分で幕別温泉に到着する。

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