幟子女王

幟子女王：水戸藩主徳川慶篤の正室、波乱の生涯

幟子女王（たかこじょおう）は、天保6年（1835年）に有栖川宮幟仁親王の第一王女として生まれ、安政3年（1856年）に22歳の若さで亡くなった女性です。彼女は、第10代水戸藩主・徳川慶篤の正室であり、12代将軍・徳川家慶の養女でもありました。幼名は線宮（いとのみや）と称し、養女となったことから線姫とも呼ばれました。院号は線教院、諡号は順貞夫人です。

生涯

有栖川宮家の長女として生まれた幟子女王は、異母兄に有栖川宮熾仁親王、異母弟に有栖川宮威仁親王がいます。また、12代将軍徳川家慶の正室・喬子女王や、水戸藩主徳川斉昭の正室で慶篤・慶喜の生母である吉子女王は大叔母にあたります。

弘化3年（1846年）に徳川家慶の養女となり、嘉永元年（1848年）には水戸藩主・徳川慶篤との縁組が幕府から水戸藩に内示されました。当時、水戸藩では前藩主・斉昭が幕府から隠居を命じられ、藩政への関与を禁じられていましたが、この頃には融和の兆しが見え始めていました。斉昭の七男・慶喜が一橋徳川家の養子となり、その後、斉昭の藩政関与も認められるようになった背景には、慶篤への養女輿入れも融和策の一環としてあったと考えられます。

嘉永3年（1850年）に京を出発し、6月に江戸城の大奥に入りました。しかし、線姫の輿入れに関して大奥で問題が発生し、斉昭と上臈御年寄姉小路の間で書状のやり取りが行われる事態となりました。

嘉永4年（1851年）に慶篤と婚約し、翌年12月には婚儀が行われ、水戸藩邸に輿入れしました。しかし、嫁いで間もない嘉永6年（1853年）には養父である徳川家慶が死去。嘉永7年（1854年）には長女・随姫（よりひめ）を出産しましたが、安政3年（1856年）に22歳という若さで亡くなりました。その死については、自殺説も囁かれています。

参考文献

「新伊勢物語」『茨城県史料 幕末編』第1巻 (1971年)、茨城県史編さん幕末維新史部会 (編)。
「水戸侯斉昭の内寵」『大名生活の内秘』(1921年)、三田村鳶魚、早稲田大学出版部。
『覚書幕末の水戸藩』(1974年)、山川菊栄、岩波書店。
『水戸市史』(1963年)、水戸市史編纂委員会 ; 水戸市史編さん近現代専門部会 (編)。水戸市。
* 『茨城県幕末史年表』(1973年)、茨城県史編さん幕末維新史部会 ; 茨城県史編さん委員会 (編)。茨城県。

彼女の短い生涯は、幕末という激動の時代における公家と武家の関係、そして大奥の権力構造の一端を垣間見せてくれます。幟子女王の存在は、歴史の表舞台には現れなくとも、時代の流れに翻弄された人々の物語を今に伝えていると言えるでしょう。

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