喬子女王

喬子女王：徳川家慶の正室、その生涯と発掘調査

喬子女王（たかこじょおう）は、寛政7年6月14日（1795年7月29日）に生まれ、天保11年1月16日（1840年2月18日）に46歳で没した、江戸幕府第12代将軍・徳川家慶の正室（御台所）です。また、第15代将軍・徳川慶喜の伯母にあたります。幼名は楽宮（さざのみや）、院号は浄観院（じょうかんいん）と称しました。

生い立ちと婚姻

喬子女王は、有栖川宮織仁親王の第六王女として誕生しました。母は側室の高木敦子（通称・常盤木、織仁親王薨去後は落飾し常信院と称す）です。兄には有栖川宮韶仁親王、梶井宮承眞法親王、輪王寺宮舜仁入道親王、知恩院宮尊超入道親王などがおり、妹には吉子女王（貞芳院、水戸藩主・徳川斉昭御簾中、15代将軍徳川慶喜の母）がいます。

享和3年9月3日（1803年10月18日）に、喬子女王は徳川家慶との婚約が決定しました。翌文化元年9月3日（1804年10月6日）、幕府の意向により、数え年10歳で江戸へ下向し、江戸城西ノ丸で婚儀までの5年間を過ごしました。文化6年12月1日（1810年1月6日）、正式に家慶と婚姻し、御簾中と称されるようになりました。

将軍御台所として

喬子女王は、文化10年（1813年）に長男・竹千代、文化12年（1815年）に次女・儔姫、文化13年（1816年）に三女・最玄院をそれぞれ出産しましたが、いずれも夭折しました。文政5年（1822年）には従三位に叙せられました。天保8年（1837年）、家慶が将軍に就任すると、喬子女王は本丸大奥に移り、御台所と称されるようになりました。

天保11年1月16日（1840年2月18日）、喬子女王は46歳で薨去しました。公式発表では1月24日薨去となっています。戒名は浄観院殿慈門妙信大姉。遺骸は寛永寺に葬られ、故郷の京都にある一心院には遺髪塔が建立されました。同年2月27日（1840年3月30日）には従二位、弘化2年6月3日（1845年7月7日）には従一位が追贈されています。

発掘調査による新事実

2008年6月9日、寛永寺徳川家墓所の改葬に伴い、近世墓所調査団による発掘調査が行われました。その結果、喬子女王の墓からは、国内最大級の墓誌（縦横2.9メートル、厚さ28センチ、重量5.3トン、15行189文字が刻印）や、木製フレームの眼鏡などの副葬品が発見されました。遺骨から推定された身長は146センチであり、江戸時代の庶民女性の平均身長144センチよりも高かったことが明らかになりました。

まとめ

喬子女王は、有栖川宮家から徳川将軍家に嫁ぎ、御台所として幕府を支えた女性でした。その生涯は、宮廷と幕府の複雑な関係の中で、重要な役割を果たしました。発掘調査によって明らかになった彼女の人物像は、歴史研究に新たな視点を与えています。特に、巨大な墓誌や眼鏡といった副葬品は、当時の社会や文化を考察する上で貴重な資料となっています。

参考資料

* 高松宮蔵版『織仁親王行実』（1938年）

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