幡崎鼎

幡崎鼎（はたざき かなえ）

生涯

幡崎鼎は、文化4年（1807年）に長崎で生まれた、江戸時代後期の蘭学者です。幼名は藤市、後に藤平と名乗りました。彼は、長崎の出島にあったオランダ商館で、幼少期から使用人として働き始め、そこでオランダ語を習得しました。

その後、彼は当時のオランダ商館長であったヨハン・ウィレム・デ・スチューレルと共に江戸へ赴きます。文政11年（1828年）に発生したシーボルト事件に連座し、町預けの処分を受けましたが、天保元年（1830年）に逃亡し、名前を「幡崎鼎」と改めて大坂で蘭学塾を開きました。

その後、彼は再び江戸に出て蘭学塾を開きます。天保4年（1833年）には、水戸藩に仕えていた蘭学者、青地林宗が亡くなったことをきっかけに、水戸藩に招聘され、蘭書『海上砲術全書』の翻訳に携わりました。

また、この頃、高野長英や小関三英、渡辺崋山らが参加していた「尚歯会」に加わり、長英や三英と共に崋山の蘭学研究を補佐しました。また、江川英龍に最新情報を提供する役割も担いました。

天保7年（1836年）、水戸藩の命令でオランダの兵書を購入するために長崎に戻った際、逃亡したことが発覚し、長崎奉行所に捕縛されました。その後、江戸に送還され、天保9年（1838年）に軽追放処分となり、伊勢の菰野藩に預けられ、そのまま病死しました。天保13年7月2日（1842年8月7日）、数奇な運命を辿った35年の生涯を閉じました。

人物

幡崎鼎は、幼少の頃からオランダ語を習得し、その語学力を活かして蘭学の研究に励みました。彼は、シーボルト事件という困難な状況にも屈せず、蘭学塾を開設し、後進の育成にも尽力しました。また、尚歯会の一員として、当時の蘭学研究に貢献しただけでなく、水戸藩の砲術書翻訳にも携わるなど、幅広い分野で活躍しました。しかし、逃亡と捕縛、そして病死という波乱に満ちた人生を送りました。

幡崎鼎の業績

蘭学塾の開設と後進の育成
『海上砲術全書』の翻訳
尚歯会での蘭学研究の補助
江川英龍への情報提供

幡崎鼎とシーボルト事件

シーボルト事件は、文政11年（1828年）に発生した、ドイツ人医師フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが、国外持ち出し禁止の日本地図などを所持していたことが発覚した事件です。幡崎鼎は、この事件に連座し、町預けの処分を受けました。しかし、彼はこの処分を不服とし、逃亡を決意しました。

幡崎鼎と尚歯会

尚歯会は、渡辺崋山を中心に、高野長英、小関三英、佐藤一斎らが集まり、蘭学の研究や情報交換を行っていたグループです。幡崎鼎もこの会に参加し、蘭学研究の発展に貢献しました。

幡崎鼎の死

幡崎鼎は、水戸藩の命令で長崎に戻り、オランダの兵書を購入する際に逃亡したことが発覚し、捕縛されました。その後、江戸に送還され、軽追放処分となり、伊勢の菰野藩に預けられ、その地で病死しました。享年35歳という若さでした。

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