平原寿恵子

平原寿恵子（ひらはら すえこ）は、1907年1月24日に東京府（現在の東京都）で生まれ、1993年2月20日に86歳で生涯を閉じました。彼女は、ソプラノ歌手として広く知られていますが、アルトやメゾソプラノも歌いこなすことのできる、非常に優れた声楽家でした。また、音楽教育者としても長年にわたり活躍し、多くの後進を育てました。

平原は、幼少期から音楽の才能を発揮し、1924年には童謡歌手として「叱られて」をレコードに吹き込みました。その後、本格的に声楽を学ぶため、1931年に東京音楽学校を卒業、1933年には同校の研究科を修了しました。さらに、ヘルマン・ヴーハープフェニッヒに師事し、研鑽を積みました。

1934年、平原は東京音楽学校の教授に就任し、後進の指導にあたりました。1974年まで、東京芸術大学の教授として教鞭を執り、その間、多くの優れた音楽家を育成しました。教育者としての彼女の功績は非常に大きく、その指導を受けた門下生たちは、現在も音楽界の第一線で活躍しています。

演奏家としての平原の業績も特筆すべきものです。1935年には、日比谷公会堂で行われた東京音楽学校オーケストラ第74回定期演奏会で、マーラーの交響曲第3番の日本初演においてアルト独唱を務めました。また、1939年から1941年までベルリンに留学し、ミヒャエル・ラウハイゼン、マリア・イーヴォギュン、フラウ・ミュッツェといった名だたる声楽家に師事し、さらに音楽性を深めました。1940年にはベルリン音楽大学を修了しています。

1941年、東京音楽学校第93回定期演奏会では、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」でケルビーノ役を演じました。1953年には、モーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」の演奏会形式初演でメゾソプラノ独唱を務めるなど、様々なオペラやコンサートで活躍しました。また、ヴァージル・トムソンのオペラ「四人の聖者の三つの行為」でもメゾソプラノ独唱を務め、その才能は高く評価されました。

平原の門下生には、飯島千雍子、藤井久仁江、砂原美智子、斉藤純枝、野村陽子、寺谷千枝子、成田絵智子、赤沢啓子、村井はるみ、秋葉京子など、数多くの著名な音楽家がいます。彼女の指導は、門下生たちの音楽活動に大きな影響を与えました。

1974年に東京芸術大学を退官し、名誉教授となった後も、高松短期大学教授などを務め、後進の育成に尽力しました。1980年には、長年の功績が認められ、勲三等宝冠章を受章しました。晩年まで音楽への情熱を失うことなく、その生涯を音楽に捧げました。

平原は、著書として「折々の記」（1980年）と「続折々の記」（1987年）を出版しています。また、「ナポリ民謡 サンタ、ルチアー」や「テルミー…フォックストロット」などの録音も残しており、その歌声は今もなお人々に感動を与えています。

平原寿恵子は、日本の音楽史において重要な役割を果たした人物であり、その業績は後世に語り継がれるでしょう。

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