平和祈念像

平和祈念像について

長崎県長崎市松山町に位置する平和祈念像は、長崎市の平和公園にある象徴的な彫刻です。この像は、1955年に被爆10周年を迎えるにあたり、長崎市の主導で建設が計画され、1951年に工事が始まりました。除幕式は、1955年8月8日に行われ、大勢の人々が集まり、意思を明確に示した場となりました。

彫刻家の北村西望によって制作されたこの像は、彼が70代の頃に東京都の井の頭自然文化園内で制作されました。像の高さは9.7メートル、台座の高さは3.9メートルで、全体の重さは約30トンに及びます。材質は、鉄骨を基に青銅と石膏が用いられ、特に右手には避雷針が設けられています。制作費用は約3000万円で、これは国内外からの募金によって賄われました。一方、台座にかかる費用の2000万円は長崎市の予算から支出されています。

この像の周囲には多くの意義深いプレートや碑文が設置されています。表側の左には「平和祈念像」と記されたプレートが掲げられ、右側には当時の長崎市長・田川務による「平和祈念像建立のことば」が刻まれています。裏側には、北村西望自身による「平和祈念像作者の言葉」という碑文があり、その中には「右手は原爆を示し左手は平和を 顔は戦争犠牲者の冥福を祈る」という表現が含まれています。この言葉は、像が持つ深い思いを象徴しています。

像のモデルは吉田廣一であるとされ、彼の姿を通じて多くの人が平和への願いを感じ取ることができます。像は建設以来、市民や観光客の訪れを集めており、平和のシンボルとしての役割を果たしています。1973年には市民団体が像の撤去を求める請願を提出し議会で否決されましたが、平和記念像はその後もその存在意義を保持しています。また、2010年には「第3回UNI世界大会」を記念した特殊切手に平和記念像がデザインされるなど、時代を超えて多くの人々に親しまれています。

さらに、平和祈念像の原型や試作品は数カ所に展示されています。例えば、東京都の井の頭恩賜公園内にある北村西望彫刻館には、オリジナルの原型が保管されています。また、長崎拘置所には、西望が制作した試作品が設置されており、そこには原爆投下時に多くの人々が命を失った場所の記憶を留める意味が込められています。

この像に類似したモデルは他にも存在し、長崎県島原市の西望記念館や、東京都三鷹市の仙川公園、北区王子の北とぴあなどに設置されています。これらの施設は、長崎の平和をさらに広げる役割を担っています。平和祈念像は、単なる彫刻にとどまらず、戦争の悲惨さを伝え、未来に向けた平和への決意を表現する重要な文化財として、今後もその存在感を放ち続けることでしょう。

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