平安神宮前駅

平安神宮前駅（へいあんじんぐうまええき）は、過去に京都府京都市東山区に位置していた、京阪神急行電鉄（現在の阪急電鉄につながる事業者）京津線の鉄道停留場です。都市内の道路上に敷かれた併用軌道区間にあり、約32年という比較的短い期間の存在でしたが、地域の交通網の一部を担っていました。

沿革

この停留場の歴史は、1912年（大正元年）8月15日に始まりました。京津電気軌道が開業させた当初は、「応天門通駅」として設置されました。これは、京津線が開通した初期からの停留場の一つです。

開業からしばらく経ち、運営会社と停留場名の両方に変化が生じます。1925年（大正14年）2月1日には、京津電気軌道が京阪電気鉄道（初代）に合併されたことにより、京阪電気鉄道の停留場となりました。

その後、1928年（昭和3年）7月1日には、「神宮道駅」と停留場名が改称されます。さらに、1931年（昭和6年）2月20日には、京津線の軌道が三条通上の併用軌道へと移設されるのに伴い、停留場も新たな位置に移されました。

再び駅名が変更されるのは、1941年（昭和16年）のことです。太平洋戦争が始まった時局の中、「平安神宮前駅」へと改称されましたが、具体的な改称日付は明らかになっていません。

戦時体制下での交通事業再編が進む中、1943年（昭和18年）10月1日には陸上交通事業調整法に基づく措置により、京阪電気鉄道が阪神急行電鉄に併合されたため、この停留場は京阪神急行電鉄の管轄となりました。しかし、その翌年である1944年（昭和19年）には、廃止という運命をたどることになり、その歴史に幕を下ろしました。

停留場名の変遷とその由来

停留場名の変遷は、その立地と時代の流れを反映しています。

開業時の「応天門通駅」という名称は、文字通り平安神宮の応天門へ続く道、応天門通に面していたことに由来します。この通りが、1928年（昭和3年）5月24日付の京都市告示第252号によって「神宮道」と正式に命名されたことに呼応し、同年7月1日には停留場名も「神宮道駅」へと変更されました。

1941年（昭和16年）に再び行われた改称では、「平安神宮前駅」となりました。この改称は、太平洋戦争勃発という時代背景の中でなされ、平安神宮への近接性が改めて名称の理由とされたものです。

ルーブル展駅としての一時的な「復活」

平安神宮前駅が廃止されてから11年後の1955年（昭和30年）、京都市美術館で国際的な「ルーブル展」が開催され、多数の観覧客が見込まれました。この特別展へのアクセスを確保するため、開催期間中限定で臨時駅が設けられました。この臨時駅は、展覧会名にちなんで「ルーブル展駅」と呼ばれました。

「ルーブル展駅」の正確な設置場所は現在のところ不明とされていますが、かつて平安神宮前駅が存在した周辺であった可能性が高いと考えられています。そのため、この臨時駅の設置は、形は異なりますが平安神宮前駅が一時的に「復活」したかのような出来事として語られることもあります。これは、当時のルーブル展がいかに注目を集めていたかを示すエピソードでもあります。

隣接していた停留場

平安神宮前駅が廃止される直前の京阪神急行電鉄京津線における隣接停留場は、以下のようになっていました。

* 古川町駅 - 平安神宮前駅 - 蹴上駅

なお、かつては蹴上駅寄りに岡崎道駅が存在していましたが、これは1931年（昭和6年）に平安神宮前駅（当時の神宮道駅）が三条通上の併用軌道に移設された際に廃止されており、平安神宮前駅が最終期を迎える時点での隣駅ではありませんでした。

平安神宮前駅は、短い活動期間ながらも、度重なる駅名の変更や運営会社の変遷、そして戦後の臨時駅としての「復活」といったエピソードを通じて、京都市における近代交通史、特に京津線の歴史において興味深い足跡を残した停留場と言えるでしょう。

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