応天門

応天門について

応天門（おうてんもん）は、古代の宮城における正門の名称であり、複数の都に存在しました。ここでは、特に有名な洛陽、平城京、平安京の応天門について解説します。

洛陽の応天門

洛陽の応天門は、皇城の南正門として、宮城の内側に位置していました。605年に創建され、当初は則天門や紫微宮門と呼ばれていましたが、王世充によって順天門と改名されました。その後、李世民の攻撃によって焼失しましたが、唐代初期に再建され、則天門に復しました。睿宗の時代には、母である武則天の「則」の字を避けるため、現在の応天門という名称になりました。晩唐五代時代には一時的に五鳳楼と改名されたこともあります。

特徴的なのは、左右に3回ずつ折れ曲がる「双向三出闕」という様式で、これは後の紫禁城の午門にも影響を与えたと言われています。応天門は、国事や外交の重要な式典に使用される場所でした。

1959年、中州渠の開削によってほとんどが失われてしまいましたが、1992年に国家文物局によって一部が修復されました。

平城京の応天門

平城京の応天門は、朝堂院の正門であり、現在では基壇のみが残っています。朱雀門の真北に位置し、そこから会昌門跡や大極殿を望むことができます。規模は朱雀門よりも小さく、平安神宮の応天門と同程度であったと推測されています。ただし、旧跡を示す碑などは存在しません。

平安京の応天門

平安京の応天門は、大内裏の内側に位置し、朝廷内での政務や重要な儀式が行われる朝堂院（八省院）の正門でした。朱雀門のすぐ北に位置し、朱雀門、会昌門と並んで重要な門でした。場所は、かつて出世稲荷神社があった付近（現在の京都市上京区と中京区の南西の境界付近）とされていますが、こちらも旧跡を示す碑などは存在しません。

平安京の応天門の扁額は、空海の筆によるものと伝えられています。有名な「弘法にも筆の誤り」という諺は、空海（弘法大師）が応天門の扁額を書いた際に「應」の一画目を書き忘れた際、額を降ろさずに筆を投げて書き足したという伝説に由来しています。

応天門は、866年（貞観8年）に発生した応天門の変で放火されたことで有名です。その後も、度々焼失と再建を繰り返しましたが、1177年（治承元年）の大火で焼失して以降、再建されることはありませんでした。応天門の変後の再建時には、改名が議論されたこともありました。

現在、平安神宮にある応天門は、平安京の応天門を5/8のスケールで模したものです。

これらの応天門は、それぞれの都において重要な役割を果たし、歴史や文化を語る上で欠かせない存在です。

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