平完子

平完子（たいらのさだこ/かんし、生没年未詳）は、平安時代末期の平家一門の女性であり、平清盛の六女として生まれました。彼女は、摂関家との関係を深めるため、近衛基通の正室となりました。別名を寬子（かんし）とも呼ばれます。

生涯

清盛は、娘たちを利用して摂関家との血縁関係を強化しようとしました。まず、娘の盛子を近衛基実に嫁がせましたが、盛子は若くして亡くなってしまいます。そこで、基実の遺児である基通に、六女の完子を正室として迎えさせました。この婚姻は、基通が嘉応2年（1170年）に11歳で元服した直後に行われたと考えられています。

夫である基通は、平家寄りでありながら、後白河法皇の寵愛も受けていました。治承元年（1177年）に男子を出産しましたが、その子は夭折してしまいます。治承3年（1179年）11月、基通が関白に任じられると、完子は北政所となり、寿永2年（1183年）2月には従三位に叙されました。

寿永2年（1183年）7月、平家一門が安徳天皇を擁して都を落ち延びる際、基通は同行を拒否し、後白河法皇のもとへ逃れました。しかし、完子は平家一門と共に西へ向かいました。文治元年（1185年）、壇ノ浦の戦いで平家一門が滅亡する中、完子は生き残り、建礼門院と共に都へ護送されました。

基通は、安徳天皇に代わって擁立された後鳥羽天皇の摂政として宮廷に返り咲きましたが、帰洛後の完子との関係は明らかではありません。その後の完子の記録はなく、出家したと推測されています。

『平家物語』によれば、完子は和歌に優れ、非常に肌が美しく、衣通姫（そとおりひめ）と称されたと伝えられています。

彼女の生涯は、平家一門の栄華と没落、そして政略結婚という時代背景の中で翻弄された女性の姿を映し出しています。

参考文献

* 角田文衞　『平家後抄〈上〉落日後の平家』　講談社学術文庫　2000年（1981年刊行）。

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