平岡凞

平岡凞：日本の近代を駆け抜けた多才な人物

平岡凞（ひらおかひろし、1856年-1934年）は、日本の近代化に大きく貢献した、稀有な人物です。鉄道技師として活躍した一方、日本における野球の黎明期を支え、実業家、そして三味線奏者としても才能を発揮しました。その波乱に満ちた生涯は、日本の近代史を彩る興味深い物語として語られています。

鉄道技師としての貢献

江戸に生まれた平岡は、1871年、自費でアメリカへ留学。機関車工場で働き、機械製造技術を習得する傍ら、後に彼の生涯を彩ることになる野球にも触れました。帰国後、工部省鉄道局に勤務し、四等技師まで昇進。しかし、独立への道を歩み、1890年には匿名組合平岡工場を創業します。1899年には汽車製造の副社長に就任するなど、日本の鉄道産業発展に貢献しました。平岡工場は1901年に汽車製造に買収され、東京支店となりましたが、その功績は日本の鉄道史に刻まれています。

日本野球の父

平岡は、日本における野球の創始者の一人として広く知られています。工部省鉄道局勤務時代、1878年には新橋停車場構内に日本初の野球場を作り、「新橋アスレチック倶楽部」を創設。アメリカから最新のルールブックを取り寄せ、本格的な野球チームとして運営しました。彼の指導の下、チームは日本の野球の発展に大きく貢献しますが、平岡の鉄道局退職に伴い、1888年に解散しました。

さらに、日本で初めてカーブを投げた人物とも伝えられており、「魔球」と称され、多くの野球選手がその投げ方を学びに訪れたと言われています。その卓越した技術と指導力は、日本の野球界に大きな影響を与えたことは間違いありません。1959年には野球殿堂入りを果たし、2010年からは全日本クラブ野球選手権大会の優勝チームに「平岡杯」が授与されるなど、その功績は今もなお称えられています。

多彩な才能と晩年

野球、鉄道以外にも、平岡は多様な才能を持っていました。アメリカ留学中から音楽に親しみ、帰国後は小唄、長唄など様々な音楽をこなし、踊りの振り付けにも携わりました。特に小唄を得意とし、「平岡吟舟」という芸名でも知られています。また、河東節の再興にも尽力し、自ら東明流という三味線流派を創始、家元となりました。

1912年に全ての職を引退後は、三味線に没頭する生活を送りました。気前の良さで知られ、「平岡大尽」と呼ばれた一方、1934年に亡くなった際には、遺族には生活費以上のものは残さなかったといいます。

まとめ

平岡凞の生涯は、近代日本の発展と深く関わっています。鉄道技師としての技術、日本の野球界におけるパイオニアとしての功績、そして三味線奏者としての才能。彼の多様な才能と情熱は、後世に多大な影響を与え続け、現代にいたるまで人々に語り継がれています。その生き様は、日本の近代史を語る上で欠かせない、重要な一ページと言えるでしょう。

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