平川廃寺跡

平川廃寺跡について

平川廃寺跡（ひらかわはいじあと）は、京都府城陽市平川古宮にある歴史的な寺院跡であり、国の史跡に指定されています。この遺跡は、旧大和街道に近く、久津川古墳群の中央側に位置しています。寺の中心部には塔跡と金堂跡が残されていますが、周囲は民家に囲まれており、当時の寺域はほとんど消失しています。現在、礎石や基壇の復元は行われておらず、建物の痕跡は土壇としてわずかに確認することができるのみです。

歴史的背景

平川廃寺の創建は奈良時代中期にさかのぼると考えられており、かつては山城国分寺に匹敵する規模を誇った南山城地域の代表的な寺院であったと評判です。主な建物である塔や金堂は火災によって焼失し、その後再建されることはなく、平安時代の初期には寺院は廃絶したとされています。文献には寺名は登場せず、地名から名付けられたと考えられています。1975年には国の史跡としての指定を受けました。

寺院の考古学的調査は1940年代に始まり、1943年には瓦の出土が見つかり、その重要性が注目されました。さらに1966年には発掘調査が行われ、建物の瓦積基壇が発見されました。1972年から1974年にかけては、塔と金堂の基壇やそれを取り囲む回廊、寺域を区画する築地の痕跡が確認されました。これにより、平川廃寺の伽藍配置は西に塔、東に金堂を置く法隆寺式であると推測されています。

建物の構造

塔の基壇は、河原石を使った瓦積基壇で直径は約20cm、1辺は約17.2mの大きさです。金堂の基壇も同じく瓦積基壇であり、東西に22.5m、南北に17.2mの広さを持っています。また、基壇の南辺は奈良時代末から平安時代初期にかけて南へ2.2m拡張されていることが分かっています。基壇においては、礎石の据え付け跡も検出されています。このことから、創建は奈良時代中頃とされ、さらに奈良時代末から平安時代の初めにかけて修理が行われたことが確認されていますが、やがて火災で再び焼失し、寺は消えてしまいました。

渡来人と地域の関係

平川廃寺は、渡来人系の黄文氏の氏寺とする説もあり、藤田智子によると、この地域（山背国久世郡）に拠点を持ち、建築や芸術の分野で優れた技術力を発揮していたとされています。瓦の分析からは、同じ山背国の相楽郡で進められていた恭仁宮と同様の瓦が使用され、恭仁宮の建設（741年）頃に国家の支援を受けて設立された可能性も示唆されています。また、木本好信は藤田の研究を引き継ぎ、橘諸兄政権との関係性を推測し、橘奈良麻呂の変との関連について論じています。

赤塚古墳との関係

平川廃寺跡の西側には赤塚古墳があります。古墳はすでに多くが削られていたものの、直径約22.5mの円墳であり、5世紀後半に築造されたと推測されています。築地はこの古墳を避ける形で造成されていました。

アクセス

平川廃寺跡へは、近畿日本鉄道の久津川駅から徒歩約15分でアクセスが可能です。この遺跡は、古代のひとびとの信仰や文化を知る上で貴重な証となっております。

もう一度検索