平田幸正

平田幸正の生涯と業績

平田幸正（ひらた ゆきまさ、1925年5月5日 - 2014年2月15日）は、日本の医学界において重要な役割を果たした医師であり、特に糖尿病研究において顕著な業績を残しました。彼は元日本糖尿病学会の会長であり、東京女子医科大学病院の初代糖尿病センター所長でもありました。

幼少期と医師を目指した理由

平田は山口県小郡町（現山口市）で生まれました。幼い頃に父親が急逝し、母親は結核を抱え、過酷な戦前戦中期を経験しました。このような環境の中で、多くの親類や知人を病で失い、彼は「人命を救いたい」との強い思いから、医師を目指すことを決意しました。九州大学医学部に進学し、1948年に卒業後は大学院に進みました。

医学界でのキャリア

平田は助手や講師としてのキャリアを積み、1960年には2年間の米国留学を経験しました。帰国後、1970年には世界で初めてインスリン自己免疫症候群の症例を報告しました。その後、彼は1974年から日本糖尿病学会の会長に就任し、子どものための「小児糖尿病サマーキャンプ」を企画しました。この活動は、現在も「小児糖尿病大山サマーキャンプ」として受け継がれています。

1975年からは東京女子医科大学第三内科の教授として勤務し、日本の大学院で初めての糖尿病センターを設立しました。このセンターは、1987年に移転し、単独の建物へと移ることとなります。平田はまた、1987年から日本糖尿病協会の副理事長、1990年からは理事長として医療連携の強化に努めました。彼は、患者のニーズに応える新しい組織形態を構築し、医療従事者と患者の関係を深める努力をしました。

1991年には糖尿病センターの所長を退任し、福岡に戻った後も病院顧問として診療に携わりました。彼は2014年に88歳でこの世を去りました。

インスリン自己免疫症候群の発見

平田が特に注目を集めたのは、1968年におけるインスリン自己免疫症候群の発見でした。九州大学で勤務していた彼は、低血糖症状を呈する患者を診察しました。この患者はインスリンの投与歴がなく、平田は非典型的な抗体の存在に気づいたのです。この抗体がインスリンと結合し、血中で低血糖を引き起こしていたことを突き止めました。学会での初報告は半信半疑だったものの、後に彼の理論は広まり「平田病」と呼ばれるようになりました。

インスリン自己注射の法制化に尽力

平田はまた、インスリン自己注射の保険適用を求める運動にも取り組みました。1971年に署名運動を開始し、11万人の署名を集めましたが、その当時は厚生省に認可されることはありませんでした。しかし、1981年にようやく保険適用が認められ、彼の長年の努力が実を結びました。

私生活とエピソード

東京女子医科大学病院勤務中、彼自身も2型糖尿病を抱えるようになり、徹底した食事療法を行ったことで知られています。弟子や患者からは「糖尿病の神様」と呼ばれ、非常に慕われていました。彼はまた、医局員からの還暦祝いに耳掻きを配るサービス精神旺盛な一面も持っていました。これは医学教育の元祖、ウィリアム・オスラーの名言に由来しています。

著作と受賞歴

平田は多くの著作を執筆し、糖尿病に関する知識普及に貢献しました。1976年に受賞した朝日学術奨励賞をはじめ、日本糖尿病学会のハーゲドーン賞や坂口賞など、数々の栄誉に輝きました。彼の業績は今なお、多くの医療者や患者、そして次世代を担う医学生に受け継がれています。平田の情熱と献身は、糖尿病研究の発展にさらなる影響を与え続けているのです。

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