平田洋

愛知県豊田市出身の元プロ野球選手、平田 洋（ひらた ひろし）氏は、1975年11月25日に生まれました。右投げ右打ちの投手として、短いプロ野球でのキャリアを過ごしました。

高校時代

小学校5年生で野球を始め、以後投手一筋。中学卒業時には多くの強豪校から誘いを受ける中で、地元愛知県の豊田大谷高校に進学しました。2年生でエースとなると、その剛速球は高校球界でも屈指と評され、注目を集めます。

夏の県大会では、1試合17奪三振を記録するなどの力投でチームを初の5回戦進出に導きましたが、準々決勝で強豪・東邦高校に敗れ、力勝負だけでは通用しない経験をしました。この悔しさから、翌年に向けた成長を誓います。

2年生の秋には、最速146km/hを武器に明治神宮野球大会に出場し、全国的な知名度を得ました。しかし、3年生に進級する直前に右肩を故障。さらに腰痛にも悩まされましたが、背番号11を励みに克服し、春先には調子を取り戻します。この頃には基礎体力強化により球速は148km/hに向上。力任せの投球だけでなく、状況に応じたカーブやフォークも習得し、投球の幅を広げました。中日のスカウトは早くから平田氏の体格と潜在能力を高く評価していました。

最後の夏、愛知県大会ではプロ球団スカウトが見守る中で、1回戦で最速145km/hを計測するなど圧倒的な投球を見せます。4回戦では自己タイ記録となる17奪三振を奪い完封勝利。準々決勝でも完封勝利を収めましたが、準決勝の享栄高校戦では、1点リードの最終回に相手投手に痛恨の逆転サヨナラ本塁打を浴び、甲子園出場を逃しました。マウンドで涙を流したこの敗戦は、彼の記憶に強く刻まれました。

ドラフト指名

甲子園には届きませんでしたが、夏の大会での34イニング連続無失点など、その能力はプロ球界で高く評価されました。特に右肩の状態も回復し、高校生投手としては平井正史氏（後にオリックス1位）とともにドラフト1位候補と目されます。

平田氏自身は、幼い頃から地元・愛知を本拠地とする中日ドラゴンズへの入団を強く希望しており、他球団のスカウトには「中日以外なら入団拒否」と公言していました。過去に地元逸材の獲得を逃してきた中日球団も、平田氏を「将来のエース候補であり即戦力としても期待できる」と高く評価。相思相愛の中、中日はドラフト会議での1位指名を決定します。他球団の強行指名の可能性も噂されましたが、最終的に中日が単独で1位指名権を獲得。会見で平田氏は、当時巨人に移籍した落合博満氏との対戦に意欲を見せました。中日にとって、地元出身の高校生をドラフト1位で指名するのは、近藤真一氏以来のことでした。

プロ入り後（中日時代）

鳴り物入りで入団した平田氏は、希望通り背番号11を背負います。契約金は当時の球団最高額、高校生としても松井秀喜氏に次ぐ高評価でした。入団会見では「開幕一軍を目指す」「ノーラン・ライアンのように長く野球を続けたい」と決意を述べました。

高卒新人としては異例の春季沖縄キャンプ一軍参加が決まりますが、卒業試験で合流が遅れます。周囲の期待と一軍という環境の中で、精神的・肉体的な疲労が蓄積し、集中力を欠く場面も見られました。また、髪型などプロ生活特有の規律に戸惑いを感じ、年長者への気遣いに苦痛を感じるようになったと後に語っています。

キャンプ中に肩の痛みを訴え、三軍での体作りからやり直すことになります。二軍戦でプロ初登板を果たし、巨人・松井秀喜氏を打ち取る場面もありました。しかし、地元でのオープン戦で一軍デビューを果たした際には、力みから制球が定まらず、イチロー氏に満塁本塁打を浴びるなどプロの洗礼を受けます。目標の開幕一軍は叶わず、ファームで調整を続けました。

ファームでは地道な基本練習を繰り返し、一時は飽きを感じることもあったようですが、足腰が鍛えられ、球速・球の切れが向上。精神面でも成長を見せ、二軍昇格を勝ち取ります。しかし、二軍での初勝利まで時間を要し、シーズン終盤にようやく一軍登録。念願の一軍初先発を果たしますが、わずか3分の1イニングで4失点を喫しKO。この年の一軍登板はこれだけに終わりました。閉幕後には、球威の低下や体作りの不足が指摘され、フォーム改造にも着手しますが、これが迷走の一因となったようです。

その後のプロ生活と引退

プロ2年目となる1995年のキャンプでは、下半身強化の成果で球威が戻り、周囲からの期待も高まります。しかし、腰痛にも悩まされ、一軍に合流してもすぐに二軍に戻るなど、怪我に苦しみます。また、この時期の中日には育成体制の課題や、一軍・二軍間の連携不足が指摘されており、平田氏の伸び悩みの背景にあったとも言われます。最後の一軍登板となった9月の阪神戦では、再び大量失点を喫し、入団時の面影は失われていました。監督代行からは制球への意識の低さを、コーチからは精神面での課題や体形の変化を指摘されます。サイドスロー転向も試みましたが、球速は戻らず、二軍でも成績は低迷しました。

年俸は減額され、1998年には当時同い年の川上憲伸氏の入団に伴い背番号11を剥奪され、更にシーズン途中で外国人選手に譲る形で再び背番号を変更するなど、苦難が続きました。この年も一軍登板はなく、シーズン終了後に戦力外通告を受けます。他球団のテストも受けましたが、合格には至らず。しかし、近鉄バファローズの入団テストに合格し、移籍のチャンスを掴みました。

近鉄では再起を期しますが、ここでも一軍出場は叶わず、1999年シーズン終了後に再び戦力外通告を受け、現役を引退しました。

引退後

現役引退後は故郷に戻り、母校関係者の紹介で豊田鉄工に就職。2020年時点では工場で工長を務めていることが報じられています。

人物像・評価

高校時代からプロ野球選手になることを夢見ており、特に地元中日への思い入れは非常に強かったことが、関係者から語られています。長身から投げ下ろす最速148km/hの剛速球が最大の武器でしたが、プロ入り後はフォームを見失い、球速も低下しました。多彩な変化球も習得しましたが、プロで大成できなかった理由の一つとして、年上の多い環境で気を遣いすぎたことなど、「プロ向きの性格ではなかった」という指摘もなされています。スカウトは潜在能力に高い期待を寄せていましたが、残念ながらプロの舞台でその才能を完全に開花させることはできませんでした。

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