平畑静塔

平畑静塔（ひらはた せいとう）

平畑静塔は、1905年（明治38年）7月5日に和歌山県で生まれた俳人であり、精神科医でもありました。本名は富次郎と言います。彼は、和歌山県立和歌山中学校、第三高等学校を経て、1931年に京都帝国大学医学部を卒業しました。大学時代には精神医学を専攻し、その後、精神科医としてのキャリアを歩み始めます。

1937年には兵庫県立精神病院に赴任しますが、1944年には応召され、南京陸軍病院に勤務しました。戦後、1946年に京都帝大医学博士号を取得。その後、大阪女子医学専門学校（現関西医科大学）教授、守口市京阪病院院長、布施市（現・東大阪市）阪本病院院長を歴任しました。1961年には宇都宮市に移り、宇都宮病院の顧問となりました。

俳人としての活動は、1925年の大学時代に「京鹿子」への投句から始まりました。その後、「馬酔木」や「ホトトギス」にも投句し、1933年には井上白文地らと共に「京大俳句」を創刊しました。1935年には西東三鬼らを同誌に迎え、新興俳句運動の中心人物として活動しました。しかし、1940年には新興俳句弾圧事件に連座し、懲役二年執行猶予三年の判決を受けています。戦後は、西東三鬼や橋本多佳子らと句会を開き、1948年には山口誓子を中心とした俳誌「天狼」の創刊に参加し、編集に携わりました。

平畑静塔は、独自の俳句理論を展開し、特に1951年に発表した「俳人格」説は注目を集めました。この説では、俳句性の確立には俳人自身の俳句的な人格の発展と完成が必要だと説き、のちには俳人格の典型を高浜虚子に見るなど、論を展開しました。また、「天狼」の根元俳句論や季題論など、様々な評論でも存在感を示しました。

1971年には句集『壺国』で第5回蛇笏賞、1986年には句集『矢素』で第1回詩歌文学館賞、1995年には第7回現代俳句大賞を受賞しました。代表句としては、「藁塚に一つの強き棒挿さる」や「胡桃割る聖書の万の字をとざし」などが知られています。彼の句風は、当初は男性的で骨太と評されましたが、晩年には滋味とユーモアが加わり、伝統行事や生活・風土に素材を広げ、大らかな句風となりました。

平畑静塔は1997年（平成9年）9月11日に92歳で生涯を閉じました。彼の孫に医師の平畑光一がいますが、静塔と平畑光一の間に血縁関係はありません。

主な著書

句集
『月下の俘虜』
『壺国』
『漁歌』
『矢素』

俳書

『俳人格』

参考文献

『永田耕衣 秋元不死男 平畑静塔集』 朝日俳句文庫、1985年
『現代俳句大事典』 三省堂、2005年

外部リンク

現代俳句データベース 平畑静塔の俳句
* 増殖する俳句歳時記 平畑静塔の句

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