平知康

平知康（たいら の ともやす）：後白河院に寵愛された異色の武士

平知康は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した武士であり、院の近臣として後白河法皇に仕えました。壱岐守・平知親の子として生まれ、検非違使や左衛門尉を歴任。『平家物語』では、その異名である「鼓判官（つづみのほうがん）」として広く知られています。

後白河院の寵臣としての活躍

知康は北面[[武士]]として朝廷に仕え、検非違使にも任官するなど、武士としての経歴を重ねました。九条兼実の日記『玉葉』には、治承5年（1181年）の記述として「法皇近日第一近習者」と評されており、後白河法皇から絶大な信頼を得ていたことが伺えます。また、鼓の名手としても知られ、『愚管抄』には「ツヽミノ兵衛」という異名が記されています。

寿永2年（1183年）、源義仲が平家を都から追い出した際には、知康は義仲と源行家の初の院参を扶持するなど、朝廷内での一定の役割を果たしました。しかし、その後、義仲と後白河法皇の関係が悪化すると、知康の運命も大きく変わります。

法住寺合戦と知康

『吉記』によれば、この頃の知康は神がかりのような状態に陥り、伊勢大神宮からの神託があったなどと触れ回っていたとされています。後白河法皇は、義仲に対抗するため法住寺殿に兵を集め、対決姿勢を鮮明にしました。そして、義仲に洛外退去を要求し、「応じなければ追討の宣旨を下す」と通告したのです。これに対し、義仲は寿永2年11月19日（1184年1月3日）、法住寺殿を攻撃し、合戦に至りました（法住寺合戦）。

『愚管抄』では、知康は大江公朝とともにこの合戦に関与したとされていますが、他の史料にはその名前は見当たりません。しかし、『吾妻鏡』には、北条政子の発言として「その根元は知康が凶害より起こるなり」とあり、合戦の原因が知康にあると示唆されています。

源義経との関係、そして鎌倉へ

元暦2年（1185年）6月22日、知康は六条河原において平宗盛・平清宗の首を受け取りました。その後、在京していた源義経に接近し、『吾妻鏡』では義経の腹心の一人として描かれています。しかし、源頼朝と義経の関係が悪化し、義経が都落ちすると、知康も再び解官されることになります。

元暦3年（1186年）、知康は義経との関係を弁明するため、鎌倉へ下向しました。頼朝は知康の扱いに困り、後白河法皇に問い合わせますが、法皇は関知しないと返答します。このため、知康は鎌倉に留め置かれることとなり、2代将軍・源頼家の蹴鞠相手などとして過ごすことになります。建仁2年（1202年）の頼家主催の蹴鞠の会では、滑稽な振る舞いで周囲を沸かせたという逸話も残っています。

しかし、知康の過去の経歴を問題視する北条政子は、彼が頼家の側近となっていることを不快に思っていました。建仁3年（1203年）に頼家が追放されると、知康は京へ戻り、伏見稲荷大社付近で余生を送ったと伝えられています。

『平家物語』における知康

『平家物語』では、知康は法住寺合戦のキーパーソンとして描かれています。物語では、知康の私怨が合戦の原因であるとされ、義仲に愚弄されたと考えた知康が、法皇に義仲討伐を進言したとされています。軍奉行に任じられた知康は、鎧を着けずに四天王を描いた甲のみをかぶり、金剛鈴と鉾を持って舞い踊ったとされ、周囲の人々から天狗がついたと噂されました。

映像作品における平知康

平知康は、数々のテレビドラマにも登場しています。

『草燃える』（1979年、NHK大河ドラマ、演：津村隆）
『義経』（2005年、NHK大河ドラマ、演：草刈正雄）
* 『鎌倉殿の13人』（2022年、NHK大河ドラマ、演：矢柴俊博）

これらの作品では、それぞれの視点から平知康の人物像が描かれています。

まとめ

平知康は、後白河法皇に寵愛された異色の武士であり、『平家物語』では法住寺合戦のキーパーソンとして描かれています。彼の生涯は、平安末期から鎌倉初期という激動の時代を反映しており、様々な史料や物語を通して、その人物像を知ることができます。

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