法住寺合戦

法住寺合戦

法住寺合戦は、寿永2年（1183年）11月19日、木曾義仲が院御所である法住寺殿を襲撃し、後白河法皇と後鳥羽天皇を幽閉した軍事クーデターです。この戦いは、平氏都落ち後の混乱期における源氏同士の対立、そして朝廷内の権力闘争が複雑に絡み合った結果として起こりました。

合戦に至るまでの経緯

平氏都落ちと朝廷の混乱

寿永2年7月、平氏が都落ちすると、後白河法皇は比叡山に避難しました。その後、平氏は安徳天皇と剣璽を連れて西国へ落ち延び、京都は権力の空白地帯となりました。後白河法皇は比叡山で対策会議を開き、平氏追討を決定しますが、天皇と剣璽の奪還を優先すべきという意見も根強く、朝廷内は混乱しました。

源氏の入京と権力闘争

平氏に代わって入京したのが、木曾義仲と源行家でした。後白河法皇は彼らに平氏追討を命じますが、同時に源頼朝にも使者を派遣し、関東の支配権を事実上認めるなど、朝廷内での権力バランスを保とうとします。しかし、義仲は京の治安維持を優先せず、略奪が横行。さらに、新天皇擁立を巡って後白河法皇と対立するなど、その独善的な態度が目立ち始めました。

頼朝の台頭と義仲の孤立

一方、鎌倉の源頼朝は、平氏の横領した神社仏寺領の返還や、降伏者の処遇を巡って朝廷の信頼を得ていました。頼朝は義仲の混乱した政治を批判し、後白河法皇との関係を深め、義仲は次第に孤立していきます。頼朝の弟である源義経が率いる軍勢が迫っているという情報が伝わると、義仲は平氏との戦いを切り上げ、京へ戻ります。

決裂と襲撃

義仲が帰京すると、後白河法皇は義仲に頼朝追討の宣旨を出しません。それどころか、法住寺殿の武装化を進め、義仲に対して平氏追討のための西下を命じます。義仲は「頼朝軍が入京しないのであれば西国へ下る」と返答しましたが、後白河法皇は義仲の排除を決意します。そして、11月19日、義仲は法住寺殿を襲撃し、後白河法皇を幽閉するに至りました。

合戦の詳細

11月19日、義仲軍は法住寺殿を襲撃。後白河法皇を捕らえ、五条東洞院の摂政邸に幽閉しました。法住寺殿は徹底的に破壊され、多くの貴族や僧侶が命を落としました。この戦いは、法皇自らが武力を行使して義仲を排除しようとしたことが、義仲による軍事クーデターを招いたという点で特異なものでした。

戦後の影響

法住寺合戦の結果、義仲は政権を掌握し、松殿基房を摂政に据えた傀儡政権を樹立します。しかし、この強引なやり方は、朝廷内の反発を招き、義仲の勢力はさらに弱体化します。そして、この後、源頼朝が本格的に上洛を開始し、義仲は滅亡へと向かうことになります。

法住寺合戦は、単なる軍事衝突に留まらず、後白河法皇と木曾義仲の権力闘争、そして源氏同士の対立が複雑に絡み合った事件であり、その後の源平合戦の行方を大きく左右する重要な出来事でした。この戦いを契機に、武士による政権掌握が現実味を帯びてきたと言えるでしょう。

主な戦死者

明雲（天台座主）
円恵法親王
源光長
源光経
藤原信行
清原親業
源基国

主要な解官・処罰者

藤原朝方（中納言）
藤原兼雅（権大納言）
紀頼兼（官掌）

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