年分度者

年分度者（ねんぶんどしゃ）とは

年分度者とは、古代中国や日本において、国家が仏教の僧侶の数を統制するために設けた制度における、年間で出家（得度）を許可された僧侶の定員枠に入った者を指します。これは、国家が宗教活動を一定の範囲内に制限し、社会秩序を維持しようとした政策の一環でした。

中国における年分度者

中国では、南北朝時代の北魏において、度僧制度が確立し始めました。517年、霊太后は、年間で得度を許可する人数を定める令を出しました。この令では、大州ごとに100人の年常度僧を認めるとしています。しかし、この令は実際には実行されなかったものの、当時の記録から年分度僧の制度があったことは確認できます。

唐代に入ると、706年に「試経度僧」の制度が導入され、科挙制度のように、経典に関する試験に合格した者のみが得度を許されるようになりました。これにより、僧侶の質を向上させる試みが行われました。

日本における年分度者

日本では、平安時代初期に、各寺院や宗派ごとに年間で得度を許される人数が朝廷によって定められました。年分度者は「年分学生」や単に「年分」とも呼ばれました。これは、奈良時代以降の「度縁の制」の乱れによって得度者が増加し、仏教界に弊害が生じたため、その対策として設けられました。

度縁の制では、一定の条件を満たせば誰でも得度できたため、僧侶の質が低下する傾向がありました。そこで、朝廷は年分度者の制度を設け、得度を許可する人数を制限することで、僧侶の質を維持し、仏教界の秩序を保とうとしました。

定員外の度僧制度

年分度者以外にも、定員外の度僧を認める制度も存在しました。例えば、皇帝や天皇の恩恵として行われる「特恩度僧」や、国家財政の収入源とするために行われた「売度（売牒、出売度牒）」などがあります。これらの制度は、国家の都合や特殊な事情に応じて、臨時に僧侶を増やすためのものでした。

これらの制度は、仏教界の制度が国家の統制下にあったことを示しており、僧侶の数は国家政策によって調整されていました。

年分度者の意義

年分度者の制度は、仏教が国家の庇護下にある一方で、その活動が国家によって管理されていたことを示しています。この制度は、僧侶の数を調整し、仏教界の秩序を維持するとともに、国家の財政にも影響を与えました。

関連項目

* 戒壇

年分度者は、仏教の歴史において重要な制度の一つであり、当時の社会や宗教の状況を理解する上で欠かせない要素です。この制度を通じて、国家が宗教にどのように関わっていたのか、また、宗教が社会にどのような影響を与えていたのかを考察することができます。

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