幸せへのまわり道

映画『幸せへのまわり道』

2019年にアメリカ合衆国で製作されたドラマ映画『幸せへのまわり道』（原題：A Beautiful Day in the Neighborhood）は、ジャーナリスト、トム・ジュノーが1998年に雑誌「エスクァイア」に寄稿した記事『Can You Say...Hero?』を原作としています。マリエル・ヘラーが監督を務め、俳優のマシュー・リスとトム・ハンクスが主演を務めました。

この作品は、実在の人物である米国の著名な子ども向けテレビ番組の司会者、フレッド・ロジャースと、彼を取材することになった一人の記者の交流を通じて描かれる人間ドラマです。物語の中心となるのは、ロイド・ヴォーゲルという名のジャーナリストです。彼はジャーナリストとしては優れているものの、どこか斜に構え、物事に対して懐疑的な態度を取る傾向がありました。

ある日、ロイドは人気番組の司会者であるフレッド・ロジャースに関する記事を執筆する機会を得て、取材のために彼の働く場所を訪れます。そこでロイドが出会ったフレッドは、温厚な人柄でありながら、人の内面を見抜く鋭い観察眼を持っていました。フレッドは短い会話の中で、ロイドが人生のある種の壁に直面していることを見抜きます。

映画は、フレッドとの交流が深まるにつれて、ロイドが自身の抱える問題、特に長らく放置していた家族間の課題に真摯に向き合い、個人的な成長を遂げていく様子を描いています。フレッド・ロジャースの揺るぎない優しさや共感の精神に触れることで、ロイドは自身の頑なな姿勢を和らげ、人間関係におけるより建設的なあり方を見つけていくのです。

主要キャストとして、人生に迷いを抱えるジャーナリスト、ロイド・ヴォーゲルをマシュー・リスが演じ、そして米国の「フレンズおじさん」として親しまれたフレッド・ロジャースを名優トム・ハンクスが演じています。また、ロイドの父ジェリーをクリス・クーパー、ロイドの妻アンドレアをスーザン・ケレチ・ワトソンがそれぞれ演じ、物語に深みを与えています。

製作過程では、本作の脚本は2013年に有望な未製作脚本リスト「ブラックリスト」に選出されるなど、以前から注目されていました。2018年に主要キャストが順次発表され、同年9月にはペンシルベニア州ピッツバーグを中心に主要撮影が開始されました。撮影期間中には、残念ながら音響担当者が事故で亡くなるという痛ましい出来事も発生しています。

公開に向けては、2018年12月に正式タイトルが『A Beautiful Day in the Neighborhood』に決定。2019年7月にはオフィシャル・トレイラーが公開され、同年9月にはトロント国際映画祭でプレミア上映されました。当初の全米公開予定日から延期され、最終的に2019年11月22日に封切られました。

興行収入としては、公開初週末は同週公開の話題作に挟まれ、事前の予測をわずかに下回ったものの、週末ランキング初登場3位という健闘を見せました。

本作は批評家から高い評価を獲得しています。映画批評サイトRotten Tomatoesでは95%という高い支持率を記録し、Metacriticでも82/100という加重平均値を得ています。観客からの評価を示すCinemaScoreも「A」を獲得するなど、批評家・観客双方から非常に好意的に受け止められました。多くのレビューでは、「インスピレーションの源泉となったフレッド・ロジャースのように、多くの人々に愛される作品」「受容と理解というメッセージが観客の心を強く打つ」といった点が特に称賛されています。フレッド・ロジャースの人間性を温かく描きながら、自己の成長や家族の絆の大切さを問いかける感動的な作品として、広く評価されています。

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