幸福会ヤマギシ会

幸福会ヤマギシ会：理想社会の追求と共同生活の実態

幸福会ヤマギシ会は、農業と牧畜を基盤としたユートピアを目指す団体で、通称「ヤマギシ会」として知られています。1953年に山岸巳代蔵が提唱する理念を基に「山岸式養鶏会」として発足し、その後「山岸会」を経て、1995年に現在の名称に変更されました。

特徴

無所有一体の生活

「無所有一体」の生活を信条とし、個人の所有を否定する独自の共同生活を実践しています。1960年代のヒッピー的な共同体と比較されることもありますが、キリスト教と家族を重視するアーミッシュとは異なります。

経済規模

農事組合法人として高い売上高を誇ります。全国に26か所のヤマギシズム社会実顕地があり、約1500人が共同生活を営んでいます。海外にも6箇所の実顕地があり、未参画の会員は約5万人とされています。

会員資格

会員になるには、一週間の合宿形式の講座「特別講習研鑽会」を受講する必要があります。その後、「研鑽学校」と呼ばれる2週間の講習を受けることで、実顕地への参画資格を得られます。

活動内容

農業と生産

各実顕地で生産された農産物の販売が主な収入源です。ブラジルでは大規模なオレンジ園を経営し、秋田県大潟村では水稲栽培や養鶏など、複合的な農業を展開しています。これらの農産物加工品は全国で販売され、「エコビレッジ」の先駆けとしても評価されることがあります。

研鑽会

ヤマギシ会では「研鑽会」と呼ばれる話し合いを重視し、すべての意思決定は研鑽によって行われます。研鑽会では、参加者が個人の利害を超えて真理を追求するとされています。

ヤマギシズム特別講習研鑽会（特講）

特講は、合宿形式で行われる研鑽会で、参加者は自身の考え方を見直し、「研鑽態度」を身につけることを目的とします。特講は生涯に一度しか受講できません。

組織と目的

組織

会員の自発的な自由意志に基づき活動する団体とされ、特定の指導者は存在しないとされています。ただし、実際には意思決定機関が存在し、会員間に階層・序列があるとの指摘もあります。

目的

「すべての人が幸福である社会」の実現を目的とし、「無所有・共用・共活」を内容とするヤマギシズムを掲げています。世界を理想社会に変革することを目指し、自分たちが起こす世界革命を「急進Z革命」と称しています。

批判と問題点

マインドコントロールの疑い

1990年代にはマスメディアで盛んに取り上げられ、外部から強い批判を受けました。特に、特別講習研鑽会における「怒り研鑽」と呼ばれる手法は、参加者に解離状態を引き起こす可能性があると指摘されています。

組織の不透明性

組織の実情が外部に明かされず、会員歴の長い者でも組織についてほとんど把握していないとされています。また、財産を寄付させた上で脱退を認めないなどの問題も指摘されています。

現在の状況

1990年代の批判以降、会員数は減少し、実顕地の閉鎖・統合も進んでいます。しかし、近年では農業エコ・ヴィレッジの先駆者として再び注目を集めています。

幸福会ヤマギシ会は、理想社会の実現を目指す特異な共同体ですが、その活動や組織には様々な問題点も指摘されています。入会を検討する際は、慎重な情報収集と検討が必要です。

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